腫瘍について
2010.12.26
今回、担当する獣医師の中村 昭仁です。
今回のテーマは腫瘍です。
人医療だけでなく、いまや小動物医療でも腫瘍は避けては通れない疾患です。
ある文献では「10歳以上のイヌでは40%以上が腫瘍を発生していた」という報告があります。
現在、腫瘍が小動物の主要な死因であることはいうまでもありません。
小動物医療での腫瘍について一般的なことをお話したいと思います。
まず、「腫瘍はなぜ発生するのか」という非常に難しい疑問があります。
「腫瘍は遺伝的な疾患である」ということはほぼ確立されていますが、それ以上のことは研究段階であるといわなければなりません。
腫瘍発生に関与する要因として
・ 化学物質(例:煙草の副流煙)
・ 物理的要因(例:日光)
・ ホルモン
・ ウィルス
などが挙げられています。
次に腫瘍の診断ですが、確定診断は組織診断になります。
つまり、腫瘍と思われる組織を採取して細胞レベルで検査を行い、診断をくだすということになります。
よく良性、悪性という言葉を耳にします。
これについても診断は同様で組織を採取しての診断になります。
一般的に悪性の腫瘍は成長が速く(急速に大きくなる、もしくは拡大する)、転移病変を認めることがある、といわれています。
また、組織診断とあわせてX線検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などの画像による診断を行うことが多いですが、これらはあくまでも補助的なものです。
そして腫瘍の治療ですが、現在の主な治療法は以下の5つです。
① 外科的切除
② 化学療法(抗がん剤治療)
③ 放射線治療
④ 免疫療法
⑤ 分子標的療法(遺伝子治療)
④と⑤は現在、研究段階であり、実際は①~③を組み合わせて行うことが多いです。
どれを選択するかは腫瘍の種類、動物の状態などによります。
また、悪性腫瘍の場合、治療と併行して痛みを抑えていくことが必要になっていきます。
獣医師として勤務してもうすぐ3年になりますが、これまで腫瘍を抱えたいろいろな動物に出会ってきました。
そのなかで獣医師として感じたことは、飼い主と獣医師が診断や治療について十分に話をすることが大切であるということです。
それぞれの治療内容、その効果やリスク、予後などを理解し、納得いくまで話しあうことが重要であると思いました。
種類にもよりますが、悪性の腫瘍は現在ではいずれ死へとつながる疾患です。
飼い主と獣医師が話し合い、その動物の治療を選択するという過程は、その死を正面からうけとめるということであると思います。
そして、そのような過程から選択された積極的または保存的治療は、いずれにしても飼い主、獣医師、そしてその動物を満足させるものであると思います。
一般的に腫瘍は高齢になるほど発生率は高くなります。
ワンちゃん、ネコちゃんは5歳をこえたら定期検診をうけましょう!