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放射線治療

はじめまして。4月より獣医師として働いています、和田悠佑です。

出身は大阪ですが、大学が北海道にあったため久しぶりの夏の暑さにびっくりしています。

わんちゃん、ねこちゃんの熱中症には十分気をつけてくださいね。

 

大学時代は放射線学教室に所属していました。今は原発事故で放射線という言葉を聞かない日はないほど問題になっており怖いものとイメージされる方も多いかもしれません。しかし、放射線は腫瘍の治療においてとても有用なものとなり得ます。

 

放射線はDNAに直接、間接的に作用し照射部位の細胞を攻撃します。しかし、腫瘍細胞だけではなく正常の細胞にもダメージを与えます。しかし、正常細胞と腫瘍細胞を比べるとダメージから回復する速度が正常細胞の方が早いためその差を利用して複数回照射して放射線を当てより大きなダメージを腫瘍細胞に与えていくのが放射線治療のメカニズムです。

 

放射線治療の利点としては

・外科的に治療できない腫瘍にたいして治療ができる。(鼻腔内の腫瘍等)

・健康な組織や細胞を残すことができる。

・外科治療や化学療法と併用することでより効果が期待できる。

 

欠点としては

・全身的に広がっている腫瘍には適応できない。

・麻酔を何度もかけなければならない。

・皮膚障害や白内障といった放射線障害のリスクがある。

・一度の照射だけでなく何度も照射しなければならないため治療費が高額になってしまう。

 

等が挙げられます。

 

また、日本の動物病院で使用されている放射線発生装置には高電圧(メガボルテージ)放射線と常電圧(オルソボルテージ)放射線があります。
人の治療として利用されているのは、高電圧(メガボルテージ)放射線ですが動物においては費用などの問題から常電圧を利用するところも多いです。
高電圧のメリットは、深くまで放射線が届くため、頭骸内、鼻腔内、胸腔内、腹腔内など深部の腫瘍にしっかりと攻撃できます。加えて放射線のエネルギーのピークが体の表面でなく、当てた部位の2~3cmほど深い部分でピークを向かえるため皮膚表面などの障害が常電圧の装置より抑えられます。

しかし、高電圧の放射線装置は大変高額なため、まだ日本でも数か所の動物病院でしか置いていません。(神戸から一番近いところでは大阪府立大学です)。

 

放射線治療はまだまだ施設が限られており、また治療費用も高額なため、敷居の高い治療法かもしれません。今後獣医療がますます進歩し、放射線治療を行うことのできる施設が増え1頭1頭に最適な治療が行われる日が1日でも早く来てほしいですね。