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陣について

2009新年会・誕生日・陣シンガ 074.jpg今回ブログを担当させていただく看護師の濱崎です。

 

何を書こうか迷ったのですが、今回は私の亡き愛猫「陣(じん)」のことについて書かせていただこうと思います。

陣は私が高校生のときに我が家にやってきました

私の家族はもともと動物好きで、かつ田舎ということもあり犬猫はもちろん、ヤギや鶏なども飼っていました

私は小さい頃からそのような環境で育ったため、動物が身近にいるのが当たり前として育ちました。そんな中、自分でペットショップに行って、選んで買ったのは陣が初めてでした。

目の青い白い猫で、もともと耳が聞こえません。しかし彼はそんなことは全く気にもせず、兄弟に囲まれて、わがままで甘えん坊な猫に育ちました。みんなと同じように生活し、手招きをすると甘えた顔でこっちへ来て、寝るときは常に私といっしょでした。最愛の存在でした。

私が神戸に来てからは別々の生活が始まったのですが、ひょんなことから陣と、兄貴分の「グース」が神戸に送られてき、再び一緒に暮らすことになりました。

 

動物たちは、そばにいてくれるだけで私たちを癒してくれますよね。陣とグースもまさにその通りでした。

 

そんな陣の最初の症状は定期的な嘔吐でした

ご飯を吐いたり、胃液を吐いたり。最初のうちはそんなに深く考えていませんでした病院の先生に相談し、血液検査やレントゲン検査、エコー検査、ホルモン検査を行いましたが、特に異常所見はありませんでした。

が、陣の吐き気は止まらず、次第に血液が混じるようになってきました。体重も落ち、元気もなくなっていたように思います。それでも食欲だけはあったので、まだこの時点では、私は最悪な診断を描けていませんでした。

その後、バリウム検査、内視鏡検査をし、それでも原因は不明でした。

 

陣の体力はどんどん落ちていっているようでした

正直なところ、先生も私も途方に暮れる毎日でした。

 

再度、精密なエコー検査をしたところ、腸に異物らしきものがあり、閉塞があるとのこと

 

腫瘍か異物か腸捻転か・・・

 

すぐに手術が始まりました。

その結果、陣の腸にはポリープのようなできものができており、それを切除し病理学検査に出して手術は終了。麻酔からも無事に覚醒してくれました!

 

 

私はてっきりこれでよくなると思ったのです。

まだ分からないとは頭で理解しながらも、これできっとよくなるはず・・・!!と

 2010 同回合宿 001.jpg

しかし、病理学検査の結果が帰ってくる前に、陣の身体は異変をきたしてしまいました元気も食欲もなくなり、どんどん弱っていきます。しまいには大量の緑色の液体を嘔吐しました。

しんどい中、エコー検査を行うと、前と同じようなところに閉塞がみられたのですバリウム検査をして胃から小腸、大腸の流れをみてみても、ちょうど十二指腸のあたりで流れがストップしてしまいます。

 

飼い主としての決断を迫られました。

 

   ・すぐにでも試験開腹

 ・様子をみる

   ・体力の回復をまって開腹

 

悩みに悩んだすえ、お腹をあけてもらう決心をしました。このまま朝まで待ったら、陣は死ぬかもしれない。麻酔で死ぬかもしれないけれど、何もしなかったら私は一生後悔すると思いました。

 

夜中から手術が始まりました

腹を開けてみると、前回手術したところが嵌頓(かんとん)しておりそこを解除するとうまく流れてくれるようでした

 

手術は無事終わり、陣もなんとか麻酔から覚めてくれました

あのときの気持ちは今でも忘れません

陣が帰ってきてくれてどんなに嬉しかったか。ほっとしたか

 

の日、陣の病理学検査の結果が返ってきました

 

 

 

 

 

 

結果は、悪性リンパ腫

 

 

悪性リンパ腫とは簡単にいうと血液の癌です

血液中の白血球には骨髄でつくられ粒球とリンパ組織でつくられるリンパ球とがあります。リンパ球は免疫機構において欠くことのできないものですがその細胞が腫瘍化したものをリンパ肉腫、悪性リンパ腫、リンパ腫などとよんでいます。もっともよく認められる造血系腫瘍です

 

猫でのリンパ腫の原因としては60がレトロウイルスのひとつである猫白血病ウイルスで、残り40ははっきりした原因は分かっていません。陣の場合は残り40の方でした

現在では、高齢の猫になると猫白血病ウイルス陰性の子の方がリンパ腫になる可能性が高いとの報告もあるらしく、いずれにしても原因ははっきりしていません。

 

また、さまざまなタイプがあり、全身のリンパ節および器官に発生したものを多中心型リンパ腫、腸間膜リンパ節、肝臓、脾臓、腸を中心に発生したものを消化器型リンパ腫、皮膚を中心にしたものを皮膚型リンパ腫、縦隔リンパ節や胸腺を中心にしたものを胸腺縦隔型リンパ腫とよびます。

このほかにもリンパ腫はどこにでも発症するので様々な症状を伴います。たとえば、鼻腔内に発症すれば鼻出血やくしゃみ、背骨に発症すれば足の麻痺を示し、眼球内に発症して失明することもあります。

猫のリンパ系腫瘍の発生率は、10万頭に100頭といわれており、猫の全悪性腫瘍の約30がリンパ腫との報告があるそうです

 

よくみられる症状としては、体重の減少・元気消失・軽度の発熱・衰弱・食欲喪失などです。また、腫瘍の発生部位によって、嘔吐や下痢などの消化器症状、多飲多尿、呼吸困難や、咳、嚥下困難などがみられます。

さらには、リンパ節の腫大、貧血、肝脾腫、黄疸、胸水あるいは腹水、高カルシウム血症などがみられることがあるそうです。

 

治療の中心は抗癌剤の投与ですが、この薬自体が強い副作用を伴うことがあります。しかし、上手に使用することで確実に延命し、病気にかかった動物が私たちとの生活を過ごすチャンスを作ってくれる薬なのです。そのためには私たち飼い主が病気や治療をよく理解し、獣医師との十分な相談が必要になってきます

 

陣の診断は消化器型リンパ腫

治療としては、化学療法もしくは対症療法のどちらかです。化学療法の中にもいろいろな選択肢はあるのですが、簡単に分けると抗癌剤治療か内服薬による治療でした。

予後としては、(一般的に)化学療法をおこなった場合は6~9ヶ月。行わなかった場合は4~8

 

ここでもまた、飼い主としての決断をせまられることになりました。私はすぐに決めることはできませんでした

病院で抗癌剤治療している子たちをたくさん見ていて、そのつらさもしんどさもよく分かっているつもりでした。もちろん、抗癌剤が合っていて症状がだいぶマシになり、元気を取り戻す子もたくさんいます逆に抗癌剤の強さのために亡くなってしまう子もいました。

最初は、抗癌剤はせず、自然のままに逝かせてあげたいと考えていました。

今までいっぱい頑張ってきたのだからもうこれ以上頑張ってほしいと陣に言えないという思いが強かったのです

 

あまり長く考える時間はなかったのですが2~3日は悩んだと思います

 

でも結局、私は陣にもっと長く生きていてほしかった。少しでも長く一緒にいたかった。

 

私自身のために、と言ってもいいでしょう。抗癌剤治療を受けることを決意しました

 

癌剤治療といっても、薬の種類もたくさん、やり方も何パターンかあります。その中で、陣に合ったものを先生と相談して決め、陣の治療がスタートしました。静脈注射の抗癌剤をいれ、点滴治療を行いました。祈るような気持ちでした。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、残念ながら、次の日、陣は私の腕の中で逝ってしまいました

 

 

全身状態は落ちていましたし、体力もなくなっていました。陣には抗癌剤の作用に耐えるだけの力は残されていなかったのだと思います

 

 

 

陣は、小さい頃から私にだけよくなついて、本当に私の子供のような存在でした。今までのどの子よりも思い入れが強く、かけがえのない存在でした。今でもしっかり私の心の中で生き続けています

検査をするときも手術をするときも、抗癌剤治療をするときでさえも陣は私の決断に全て身をゆだねてくれたように思います

今でも、いろいろな選択が正しかったのかは分かりませんが、また同じような状況になった場合、同じ選択をすると思います。もちろん、後悔が全くないわけではありません・・・

 

陣を失って、仕事を続けていくかとても悩みました。看護師であるのに何もできなかった、と看護師としての悲しみと飼い主としての悲しみとが入り混じっていました。

そんなとき、患者さんと触れ合ったり、元気になって帰っていく姿を見たりするのは何より嬉しいことでした看護師を続けていてよかったと思う瞬間でもあります

 

病気と向き合うことはとても難しいことです。理解することはもちろん、動物たちは言葉を話せないので、すべて私たち飼い主の判断によります。獣医師と密に話し合い、相談をし、向き合っていくことが不可欠です。飼い主さんたちにはなるべく後悔の少ない選択をしていただきたいし、そのために少しでも私たち看護師がお手伝いできたらと思います。どんな決断をされたとしても、できることを全力でサポートできたらと思っています。

 

長くなりましたが、以上です。最後まで読んでくださってありがとうございました。

いつか、今まさに慢性腎不全と戦っているグースのことについても書けたらと思います

 

 

参考文

1     イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科

2     イラストでみる猫の病気平岡さん結婚式・にゃんこ 061.jpg

動物介在介入教育プログラム

今回の担当は、獣医師の有馬広治です。

 

動物介在療法という言葉を聞いたことがありますか?

アニマルセラピーという言葉なら聞いたことがある方は多いと思います。

動物が持っている力で 人間の 認知症、うつ病、脳性麻痺などの治療を

行っていくことです。

以前 新聞で、アメリカ、ワシントン州の女性刑務所の受刑者に 介護犬の育成を

受刑中に行わせたところ、受刑者の再犯率が減ったという記事を読みました。

犬を育成することで、受刑者の精神的な更生にも影響を与えるという記事でした。

興味深い記事だなと思いながら、その反面、犬たちは相当ストレスを感じているのでは

と心配になりました。しかし、犬のストレスについては何も書いていませんでした。

その後、いろいろな情報を集めるうちに日本ではこの分野(動物介在介入教育)の

研究は欧米先進国に比べ15年以上も遅れをとり、知識、技術を十分に備えた

専門家が少ないことがわかりました。

 

 アニマルセラピーは 動物介在療法、動物介在活動、動物介在教育と3つに

分けられます。老人ホームなどへ動物をつれて お年寄りに喜んでもらうのは

動物介在活動で、幼稚園、小学校での動物飼育は動物介在教育にあたります。

欧米諸国での動物介在療法、いわゆるアニマルセラピーは、医療従事者、

心理・言語療法士などの専門家が治療のどこまでを動物に参加せるか計画をし、

犬、猫、馬、イルカなどの適切な動物を用いて実施するものいい、欧米諸国でいう

アニマルセラピーは日本の医療機関では行われていません。

この問題点の一つに、医学と動物学(獣医学)をコーディネイトする専門家が

いないことがあげられます。

 

麻布大学では、動物介在療法・活動・教育に関する知識、技術をもった専門家を

養成するプログラムがあり、講義、実習、最終論文をパスすると国際的に通用する

修了書がいただけます。

今回から、私は、その2年間のプログラムを履修することにしました。

獣医師として、より幅広い視野で診療が望めるのではないか、

また、何かしら医学と獣医学のかけ橋になれればと考えています。

(写真は、この分野の権威者である デニス・ターナー先生との面談の時のものです。)

 

 

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