症例紹介

Case

2024/5/4

泌尿器/生殖器科

猫の尿管結石について手術によりSUBシステム設置を行った症例

近年、尿管結石の治療の一つとして行われているSUB(Subcutaneous Ureteral Bypass)システムは、腎臓と膀胱を繋ぐバイパスの役目を果たします。
これにより、尿管を使わず、膀胱に尿を流すことができます。

今回は、結石により尿管が閉塞しSUBシステムを設置した実際の症例を交えつつ、尿管結石、SUBシステムについて解説していきます。

尿管閉塞の原因

猫の尿管閉塞は救急医療に分類されるほど緊急であることも多く、その経過により治療内容や余命は様々です。
閉塞の原因の多くは結石であり、その他には腫瘍や炎症による狭窄でも起こります。
猫の尿管はそもそも0.4mmほどと細く、同体格の犬と比べても閉塞を起こしやすいと言われています。

尿管結石ができる理由

猫の尿管結石はシュウ酸カルシウムが多く、その結石の形成に性別差はないとされています。
発症年齢は中~高齢が多いとされていますが、生後8ヶ月で尿管結石ができたとの報告もあります。

好発猫種はヒマラヤンやペルシャ猫と言われています。
日本でも人気の猫種であるアメリカンショートヘアやマンチカン、スコティッシュフォールドも診察でよく見られるため、遺伝の可能性もあると報告されています。

実はご飯はシュウ酸カルシウム結石の原因である可能性があるとされています。
昔はストルバイト結石が尿管結石の原因であることが多く、その石を予防するために配合されたご飯が現在、広く流通しています。
それにより、ストルバイト結石の症例は減少し、その代わりにシュウ酸カルシウム結石の症例が増えたと言われています。

尿管結石の検査

尿管結石は画像検査を実施し診断します。
レントゲンで写る結石もありますが、写りにくい結石もありますので超音波検査も実施し、総合的に診断します。
また、尿管閉塞により状態が悪い場合は血液検査、尿検査も行います。

治療法

猫の尿管結石は98%以上がシュウ酸カルシウムであるという報告があり、食事療法ではこの結石を溶かすことができません。
治療は主に、結石を排泄させるか、摘出するか、バイパス手術を行うこととなります。
内科治療はこの「排泄させる」に重きを置きます。
つまり、尿管結石をどうにか膀胱に落とし込む、が治療の目的となります。

また、一般状態が悪く外科を選択できないこともあり、その場合は内科療法を行い、全身状態を上げる必要があります。
外科治療は結石の摘出やステントの挿入、バイパス手術が挙げられます。

近年注目されているのが、SUBシステムを使用したバイパス手術です。

SUBシステム(サブシステム)とは

SUBシステムは尿管よりも太いチューブを使用し、腎臓と膀胱をつなぎます。
腎臓で作られた尿が、尿管を通らずに膀胱へと流れるルートを確保できますので、尿管が何かしらの理由で閉塞している場合に有用です。
このチューブは血の塊や新たにできた尿の結晶などにより詰まる可能性があり、この詰まりが起きないように洗浄を行います。
そのために、お腹の皮膚のすぐ下に洗浄用のポートを設置します。

尿管結石で実施される、他の手術方法と比較して

  • 再閉塞のリスクが少ない
  • 術後合併症のリスクが低い
  • 手術の時間が短い
  • 退院までの日数短縮

などの利点が多く、最近では実施する症例が増えています。

術後の合併症は

  • 貧血
  • 尿路感染症
  • 非感染性膀胱炎
  • 血栓がカテーテルに詰まる
  • デバイスからの漏れ
  • SUBシステムのチューブの捻れ
  • 長期使用によるチューブの石灰化

などが挙げられます。

実際の症例

11歳の避妊メスのスコティッシュフォールドが突然叫び声をあげ、部屋の隅に隠れてしまったという主訴で来院されました。
強い痛みによる行動が疑われたためレントゲン検査を実施したところ、左尿管部分にレントゲンで白く写る領域が確認できました。

超音波検査では左の腎臓の腎盂が拡張しており、尿管の閉塞により腎臓内に尿が溜まっていると推察されました。

血液検査に大きな異常は認められませんでした。

尿管結石を膀胱内に落とすため、すぐに点滴治療を開始しましたが、尿管と腎盂の悪化が認められたため、飼い主様と相談し、SUBシステムを用いた手術を実施しました。

手術後、左腎盂の拡張は改善され、元気食欲共に回復しました。

検診でも血液検査での腎数値に異常はなく、尿管閉塞による腎臓へのダメージは最小限にとどめることができました。

まとめ

SUBシステムはここ10年で実施されている方法であり、長期的な合併症についての報告は未だ十分とは言えません。
しかし、他の尿管の手術の方法と比べると、手術時間、退院率、生存率において良好な結果が出ており尿管閉塞の手術方法として今後も増えていくことが予想されます。
尿管閉塞は時間が経つほど腎臓へのダメージが生じます。

実際には本症例のような痛み示す行動をとる猫は珍しく、食欲不振や元気が無いなど、どの病気でも見られる症状のみを示す場合もあります。
そのため尿管閉塞に気づけず、腎臓のダメージが進行している症例にも多く遭遇します。

健康診断でレントゲンや超音波の検査を実施したことがない猫は、一度画像検査をしてみることをお勧めします。

「腎臓に結石があり、いつ尿管に落ちるかわからないと言われている」

「尿管に結石はあるが、不完全閉塞ではある」

など、ご不安を感じてらっしゃる飼い主様がいれば、是非当院までご相談ください。

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