症例紹介

Case

2024/3/14

エキゾチックアニマル

うさぎの肝葉捻転について実際の肝葉捻転の症例を紹介

肝葉捻転は肝臓の一部が捻れて壊死してしまう病気で、壊死を起こすと肝臓からの出血によりショック状態に陥ったり、血栓ができて亡くなってしまうことがある、緊急性の高い病気です。
犬、猫ではとてもめずらしい病気ですが、うさぎでは時々見かける病気です。
今回は実際の症例を交えて解説していきますので、うさぎの飼い主様は是非読んで見てください。

肝葉捻転とは何か

肝臓は1つの臓器ですが、枝から葉っぱが出るように、いくつかの区画に分かれおり、医療用語ではその区画のことを『葉』といいます。


肝葉捻転はそのひと区画、あるいは数区画が捩れる病気です。
急性の完全な捻転を起こす症例と、ゆっくりと経過し、血流を妨げない不完全な捻転の症例がいます。
後者は明らかな症状を示さず、そのまま何事なく過ごす症例もいるようですね。
肝葉捻転はミニロップで発生しやすいという報告もあり、臨床現場では2005年ごろから報告されるようになった病気で、症状に活動性の低下、食欲不振、便量の低下などが挙げられることから、消化管うっ滞という病気との鑑別診断が難しい病気と言われています。

レントゲン検査では肝臓が大きく写る、白っぽく写るといった特徴があると言われていますが、この検査だけでは診断が困難なことが多く、腹水や、肝臓の一部に血流が悪い『葉』が無いかをエコー検査で、また貧血や肝数値を血液検査で確認し総合的に判断します。

肝葉捻転の原因

原因は未だはっきりとは分かっていませんが、外傷により、肝臓を固定している靭帯を損傷したり、先天的にその靭帯を持たない場合に起こると言われています。
また、肝葉捻転の症例の多くは過去に消化管うっ滞を起こしたことがあることから、胃拡張など他の臓器に圧迫されたことによる肝臓の移動なども要因の1つではないかと考えられています。

肝葉捻転の治療

治療は、手術により捻れた肝葉を摘出することが第一選択であると言われており、術後の成績は良好とされています。
しかし、完全に捻転してから24時間以上経過してしまうと、ショックや貧血などの状態悪化が進行することから、術後の成績が下がるようです。
内科治療は一般的に支持療法であり、疼痛管理や点滴など症状に合わせた治療を行います。
内科治療の成績は捻転の程度にもよりますが、捩れを治すという根本的な治療ではないことを念頭に置いておく必要があります。

肝葉捻転の実際の症例

ここからはうさぎの肝葉捻転の症例を交えて実際にどういった診断、治療をしたか解説します。
今回ご紹介するのは、10ヶ月齢のオスのホーランドロップで、食欲不振を理由に当院に来院されました。

レントゲン検査で中程度の胃拡張、血液検査では肝酵素の上昇、腹部のエコー検査で1部肝葉の血行不良所見があり、肝葉捻転と診断しました。

 

この診断結果から飼い主様と相談し、内科治療を行うこととなりました。
内科治療は、点滴、消化管運動改善薬、痛み止めなどを使用しましたが、貧血の進行、肝酵素がさらに上昇したことから、緊急手術に踏み切ることとなりました。
手術は全身麻酔下で行われましたが、うさぎの全身麻酔は呼吸停止のリスクが高いため、慎重に行われました。

ここからは手術の画像が出ますので苦手な方はご遠慮ください。

開腹すると捻転し、変色した肝臓が観察されました。
変色した肝臓を確認後はその肝臓を摘出し閉腹しました。

 

手術後は麻酔からしっかり覚め、元気食欲も徐々に開腹し、術後5日で無事退院しました。

まとめ

肝葉捻転は内科治療と外科治療で差がないと言う論文もあれば、内科治療のみを行ったうさぎの生存率は43%と、結果が悪いという論文もでており、どちらを選択するかは獣医師の経験や飼い主様の判断に委ねられているのが現状です。

当院では昨年だけで3羽診断し、いずれも外科治療を行い元気に退院していることから、貧血や血行不良の肝葉が確認される場合は、外科治療をすすめています。

ただの食滞と見逃されることがある病気ですが、肝葉捻転が疑われる場合は、一早く治療を開始する必要性があります。

少し様子を見ようかな?と思われることもあるとは思いますが、症状がある場合はなるべく早めに動物病院をご受診ください。

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