症例紹介

Case

2026/11/7

消化器科

犬の膵外分泌不全の一例犬の膵外分泌不全を治療した症例を解説

「愛犬の下痢がなかなか治らない」
「しっかり食べているのに体重が減ってしまう」
「以前より食欲が増しているのに、痩せてきた気がする」
このようなお悩みをお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の下痢にはさまざまな原因がありますが、長期間続く場合には消化や吸収に関わる病気が隠れている可能性もあります。
その一つが、食べ物を消化するための酵素が不足する膵外分泌不全です。

本記事では、数か月にわたる下痢と体重減少が続き、膵外分泌不全と診断された3歳のスタンダードプードルの症例をご紹介します。
愛犬の便に異変を感じた際に参考にしていただけたら幸いです。

犬の膵外分泌不全とは?

膵外分泌不全とは、膵臓から分泌される消化酵素が不足し、食べ物を十分に消化できなくなる病気です。
膵臓は、血糖値を調節するインスリンなどのホルモンを分泌するほか

  • 脂肪
  • タンパク質
  • 炭水化物

を分解する消化酵素を作る役割も担っています。
膵外分泌不全の犬ではこの消化酵素が不足するため、食べ物を十分に分解できず栄養を吸収しにくい状態になります。
その結果、食事をとっていても体重が減少したり、慢性的な下痢が続いたりすることが特徴です。

膵外分泌不全で見られる主な症状には

  • 長期間にわたって軟便や下痢をする
  • 体重が徐々に減少する
  • 食欲が増加する
  • 便の量が増える
  • 食べ物以外のものを口にする異食症が見られる

などが挙げられます。
ただし、これらの症状はほかの消化器疾患でも見られるため、これらの症状だけで膵外分泌不全と診断することは困難です。

慢性的な下痢が続く場合に必要な検査と治療

犬の下痢が長期間続く場合には

  • 食事内容
  • 寄生虫感染
  • 膵外分泌不全
  • 腫瘍

など、さまざまな原因を調べる必要があります。
一般的な下痢の治療で改善が見られず、体重減少が続いている場合には、膵外分泌不全が原因となっている可能性も考えられます。
膵外分泌不全の診断には、血液中のTLIという膵臓の数値が測定されます。
TLIは膵臓の消化酵素を作る働きと関連しており、著しく低下している場合には膵外分泌不全が強く疑われます。
また、葉酸やビタミンB12の測定も、消化吸収の状態を調べるために行われる検査の一つです。

犬の膵外分泌不全の治療では、不足している消化酵素を薬で補うことが基本となります。
消化酵素製剤を食事とともに投与することで、食べ物の消化が助けられ、便の状態や栄養吸収の改善が期待できます。
ただし、膵臓の機能そのものが十分に回復するとは限らないため、長期的な治療と体重管理が重要です。

重度の削痩と下痢が見られた3歳のスタンダードプードル

今回ご紹介するのは、3歳の雌のスタンダードプードルです。
数か月前から軟便や下痢を繰り返しており、体重も徐々に減少していました。
初診時の体重は10kgで、明らかな削痩が認められる状態でした。
当時の様子がこちらです。

診察当初のスタンダードプードル

膵外分泌不全の初診の様子

診察時には、食事量が必要な栄養量に対して不足していたことに加え、異食症や低血糖も確認されています。
そのため、まずは栄養管理の見直しと点滴による全身状態の改善を図りながら、下痢に対する治療を開始しました。
当時は便の状態も悪く、下痢が続いている状況でした。

下痢の様子

しかし、一般的な下痢の治療を続けても十分な改善が見られず、体重減少の原因をさらに調べる必要がありました。
そこで、膵外分泌不全を疑い、血液検査が実施されています。
血液検査では検査膵臓の消化酵素を作る働きに関連するTLIの重度の低下が確認されました。
また、葉酸とビタミンB12は、いずれも基準値を上回っていました。
これらの検査結果から、膵外分泌不全と診断されました。
その後、不足している消化酵素を補うため、パンクレアチンとベリチームによる治療を開始しています。

治療開始後は少しずつ便が固まるようになり、体重も徐々に増加しました。
現在は体重が18kgまで回復し、便の状態も安定しています。
今回の症例では、消化酵素の補充に加えて適切な栄養管理を続けることで、体重と消化器症状の改善につながりました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
犬の膵外分泌不全は、消化酵素が不足することで慢性的な下痢や体重減少を引き起こす病気です。
今回の症例では、初診時に重度の削痩や低血糖が認められましたが、膵外分泌不全と診断された後に消化酵素の補充を開始し、体重は10kgから18kgまで回復しました。
下痢が長期間続いている場合や、食事量に対して体重が増えない場合には、消化吸収に関わる病気が隠れている可能性もあります。
また、膵外分泌不全は継続的な治療が必要になることが多いため、便の状態や体重を確認しながら管理を続けることが大切です。

当院では、慢性的な下痢や体重減少に対する検査と治療にも対応しています。
愛犬の便の状態や体重に気になる変化がありましたら、お気軽にご相談ください。

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