2026/10/27
腫瘍科
猫の移行上皮癌の一例猫の移行上皮癌を手術で治療した症例を解説
「愛猫が何度もトイレに行くようになった」
「トイレに行っているのに尿が出ていない」
「猫の膀胱にも癌ができるの?」
このようなお悩みをお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
猫の頻尿は膀胱炎などで見られる症状ですが、膀胱や尿道に腫瘍ができている場合もあります。
とくに腫瘍によって尿の通り道が狭くなると、尿を十分に排出できなくなるため注意が必要です。
本記事では、頻尿をきっかけに移行上皮癌が見つかり、膀胱と尿道を摘出する手術を行った16歳の猫の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の排尿に異常が見られた際の参考にしていただければ幸いです。
猫の膀胱にできる移行上皮癌とは?
移行上皮癌とは膀胱や尿道などの内側を覆う細胞から発生する悪性腫瘍です。
現在は尿路上皮癌とも呼ばれており、膀胱だけでなく尿道にも発生することがあります。
猫の膀胱腫瘍は比較的まれですが、悪性の場合には周囲の組織へ広がったり、ほかの臓器へ転移したりする可能性がある病気です。
また、腫瘍が膀胱の出口や尿道にできると、尿の流れが妨げられることがあります。
猫の移行上皮癌では
- 何度もトイレに行く
- 少量ずつしか尿を出せなくなる
- 尿に血が混じる
- 排尿時に痛がる
- 尿が出なくなる
といった症状が見られる場合があります。
これらの症状は膀胱炎や尿路結石でも起こるため、症状だけで原因を区別することは困難です。
とくに尿が出ない状態が続くと腎機能の低下や全身状態の悪化につながるため、速やかな治療が必要になります。
猫の移行上皮癌はどう検査・治療する?
膀胱や尿道の腫瘍が疑われる場合には、レントゲン検査や超音波検査などによって尿路の状態が調べられます。
猫の移行上皮癌では、超音波検査で膀胱壁の肥厚や内側に突出する腫瘤が確認されることがあります。
また、腫瘍の診断には細胞診や病理検査が重要です。
移行上皮癌の治療方法は腫瘍の発生部位や広がりによって異なり、外科的な摘出が選択肢の一つとなります。
ただし、膀胱の出口や尿道にまで腫瘍が広がっている場合には、腫瘍だけを取り除くことが困難です。
そのため、腫瘍の広がりによっては、膀胱や尿道を摘出し、尿を体外へ排出するための新しい通り道を作る手術が必要になることもあります。
実際の症例:16歳のロシアンブルー
今回ご紹介するのは16歳8か月の去勢済みのロシアンブルーです。
頻尿を主訴に来院し、触診では膀胱が大きく膨らんでいることが確認されました。
レントゲン検査と超音波検査では膀胱の拡大と大量の尿の貯留が認められ、十分に排尿できていない状態でした。
来院時のレントゲン画像です。

さらに超音波検査では、膀胱壁の内側に盛り上がる腫瘤が尿道内にまで浸潤している様子が認められました。

腫瘍の診断のため、カテーテルを用いた吸引生検を実施したところ、移行上皮癌が疑われました。
腫瘍によって尿の排出が妨げられていたため、手術までの間は通院によるカテーテル採尿を行い、膀胱に尿が過剰にたまらないよう管理されました。
その後、膀胱・尿道全摘出術の手術が実施されています
手術中の様子です。

今回の手術では、腫瘍が存在する膀胱と尿道を摘出し、左右の腎臓から流れてくる尿を体外へ排出できるようにしました。
そのために行ったのが尿管皮膚瘻形成術です。
これは腎臓から膀胱へ尿を運ぶ尿管を皮膚につなぎ、尿の出口を新しく作る手術を指します。
尿管皮膚瘻形成術を行っている様子です。

尿管皮膚瘻では、通常のように膀胱に尿をためることができなくなるため、術後は排尿の管理方法が大きく変わります。
また、開口部の状態や尿の流れを継続して確認することも重要です。
摘出した膀胱と尿道の写真です。

摘出組織の病理検査では移行上皮癌と診断され、尿道への浸潤も確認されました。
現在も術後の経過を観察していますが、幸いなことに元気や食欲は維持できており、良好な状態で過ごしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
猫の移行上皮癌は膀胱や尿道に発生する悪性腫瘍で、頻尿や血尿などの症状を引き起こすことがあります。
今回の症例では、腫瘍が尿道まで広がり、尿を十分に排出できなくなっていたため、膀胱・尿道全摘出術と尿管皮膚瘻形成術を行いました。
手術後も継続的な管理が必要ですが、現在は元気や食欲を維持して生活できています。
頻尿は膀胱炎だけでなく腫瘍や尿道閉塞などが原因となる場合もあるため、早めの検査が大切です。
当院では、泌尿器疾患の検査や外科治療にも対応しています。
愛猫の排尿回数が増えた場合や、尿が出にくそうな様子が見られた際には、お気軽にご相談ください。