2026/10/19
消化器科
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症の一例猫の消化管穿孔を治療した症例を解説
「子猫が突然何度も吐いている」
「ぐったりして動かなくなってしまった」
「嘔吐の原因が重い病気ということもあるの?」
このような症状が見られると、飼い主様も大変心配になるのではないでしょうか。
猫の嘔吐は比較的よく見られる症状ですが、短時間に何度も吐いたり、急に元気がなくなったりする場合には注意が必要です。
このような場合は消化管に穴が開く消化管穿孔など、緊急の治療を要する病気が隠れている可能性もあります。
本記事では、急激な嘔吐をきっかけに十二指腸の穿孔が見つかり、病理検査で猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症と診断された子猫の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の体調の変化に気づくきっかけにしていただければ幸いです。
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症とは
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症は、消化管の壁などに強い炎症と硬い線維組織の増殖が起こる、比較的まれな病気です。
好酸球とは白血球の一種で、アレルギー反応や炎症に関わる細胞を指します。
この病気では好酸球を含む炎症細胞が集まり、組織が厚く硬くなることがあります。
胃や腸にしこりのような病変が形成される場合があり、画像検査だけでは腫瘍などとの区別が難しいこともあります。
正確な診断には、採取した組織を顕微鏡で調べる病理検査が重要です。
また、病変によって消化管の正常な動きが妨げられると、食べ物がスムーズに通過できなくなる場合もあるため注意が必要です。
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症の症状は病変の場所や程度によって異なりますが
- 繰り返し嘔吐する
- 食欲が低下する
- 体重が減少する
- 元気がなくなる
といった変化が見られる場合があります。
治療には病変の状態に応じて外科的処置や内科治療が検討され、炎症を抑える目的でステロイドを使用することもあります。
ただし、治療後も病変が残っていたり、再び症状が現れたりする可能性があるため、定期的な診察によって経過を観察することが大切です。
猫の消化管穿孔について
消化管穿孔とは、胃や腸の壁に穴が開く状態です。
腸の内容物が腹腔内へ漏れると、細菌による腹膜炎を引き起こし、命に関わることがあります。
腹膜炎が進行すると、全身に強い炎症が広がり、血圧の低下やショック状態につながるおそれもあるため注意が必要です。
とくに、頻回の嘔吐に加えてぐったりしている場合には、速やかに動物病院を受診しましょう。
動物病院では腹部レントゲン検査や超音波検査を用いて腹部の状態が確認されます。
腹腔内に液体が認められる場合には、その液体を採取して調べることで、腹膜炎や消化管穿孔を疑う手がかりが得られます。
消化管穿孔が強く疑われる場合には、原因を確認して治療するため、緊急の開腹手術が必要になることもあります。
実際の症例:6か月齢のエキゾチックショートヘア
今回ご紹介するのは、生後6か月の雌のエキゾチックショートヘアです。
前日から急に何度も嘔吐するようになり、来院時にはぐったりとして、力が入らない虚脱状態でした。
腹部レントゲン検査では、通常は確認できる腹部臓器の輪郭が不明瞭になる漿膜ディテールの低下が認められました。
来院時のレントゲン画像です。


さらに腹部超音波検査を行うと、腹腔内に濁りを伴う液体である腹水が確認されました。

腹水を採取して調べたところ、多数の細菌と食べ物のかけらが認められたため、消化管穿孔が強く疑われました。
腸の状態を確認するために緊急で試験開腹を行ったところ、十二指腸に硬くなった病変と穿孔が確認されました。

当初は異物による損傷が疑われ、病変部を切開して異物がないか確認されました。
しかし、異物は見つからず、腸壁の一部が著しく厚くなっていることが判明しました。

病変の原因を調べるため、腸壁の一部を採取して病理検査に提出し、切開部を縫合しました。

病理検査の結果、猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症と診断されました。
手術後は順調に回復し、現在はステロイドの内服によって病気を管理しています。
術後2か月が経過した時点でも、良好な状態を維持できています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症は、消化管の壁が厚く硬くなる、比較的まれな病気です。
今回の症例では十二指腸に穿孔が生じ、緊急手術と病理検査によって診断に至りました。
猫が突然何度も吐く場合には、消化管の重大な異常が隠れていることもあります。
とくにぐったりしている場合は様子を見ず、早急に動物病院を受診することが大切です。
当院では症状に応じた緊急の検査や外科治療を行っています。
愛猫の体調に気になる変化がありましたら、お気軽にご相談ください。