2026/10/11
腫瘍科
犬の肺腺癌の一例犬の肺腺癌に対して手術を行った症例を解説
「定期検査で肺に影が見つかった」
「咳をするようになった気がする」
「犬も肺の腫瘍になることがあるの?」
このような経験やご不安をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の肺腫瘍は症状が出にくく、定期的な検査によって偶然発見されることも少なくありません。
本記事では、定期検査をきっかけに肺腺癌が発見されたミックス犬の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の定期検査の大切さを知るきっかけにしていただければ幸いです。
犬の肺腺癌について
犬では肺に腫瘍が発生することがあります。
その中でも肺腺癌は比較的多く見られる腫瘍で、悪性腫瘍のひとつです。
犬の肺腫瘍は中高齢での発症が多く、初期には飼い主様が気づくような症状が現れないこともあります。
そのため、定期的なレントゲン検査などで偶然発見されるケースも少なくありません。
犬の肺に発生する腫瘤には肺そのものから発生する原発性肺腫瘍のほかに、他の臓器から転移した転移性肺腫瘍があります。
そのため、肺に腫瘤が見つかった際は、原発性なのか転移性なのかを含めて詳しく調べることが大切です。
肺腫瘍は進行すると腫瘍が大きくなり、リンパ節や他の部位へ転移する可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要になります。
犬の肺腺癌の症状
犬の肺腺癌では、腫瘍の大きさや位置によって症状の現れ方が異なります。
初期には無症状のこともありますが、腫瘍が進行すると
- 慢性的に咳をする
- 呼吸が早くなる
- 息苦しそうにする
- 元気や食欲が低下する
- 体重が減少する
- 散歩や運動を嫌がる
といった症状が見られることがあります。
これらの症状は他の呼吸器疾患や心臓病などでもみられるため、症状だけで肺腫瘍と判断することはできません。
このような症状が続く場合には肺腫瘍の可能性があるため、動物病院を受診しましょう。
犬の肺腺癌の診断
肺腺癌の診断は
- レントゲン検査
- CT検査
- 病理検査
などの検査から行われます。
それぞれについて解説します。
レントゲン検査
レントゲン検査では肺に腫瘤がないか確認されます。
健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることもあり、肺腫瘍を発見するきっかけとなる重要な検査です。
CT検査
CT検査ではレントゲン検査よりも詳しく腫瘍の大きさや周囲への広がりを確認できます。
手術で腫瘍を切除可能かどうかを判断するうえでも重要です。
とくに肺葉切除を検討する際にはCT検査による術前評価が必要になります。
病理検査
病理検査では、摘出した組織を詳しく調べることで腫瘍の種類や悪性度などを確認します。
画像検査だけで腫瘍の種類を確定することは難しいため、最終的な診断には病理検査が必要です。
犬の肺腺癌の治療
犬の肺腺癌の治療では、腫瘍が一つの肺葉に限局していて、切除可能と判断された場合には外科手術が選択されます。
手術では腫瘍だけを取り除くのではなく、腫瘍が発生している肺葉をまとめて切除する肺葉切除術が行われます。
肺は複数の肺葉に分かれているため、病変のある肺葉を切除しても、残った肺で呼吸機能を補うことが可能です。
ただし、腫瘍の位置や転移の有無などによっては手術が難しいケースもあります。
手術後は摘出した肺を病理検査に提出し、その結果をもとに今後の治療方針を検討します。
手術によって腫瘍を切除できた場合でも、リンパ節や肺の他の部位へ転移する可能性があるため、定期的な画像検査による経過観察が必要です。
実際の症例:ミックス犬の肺腺癌
今回ご紹介するのは、14歳の去勢済み雄のミックス犬の症例です。
この症例は3か月前に胆嚢と脾臓の摘出手術を受けており、その後の経過は良好で治療は終了していました。
しかし、血液検査で白血球数の高値がみられていたため、経過を確認する目的で再検査が行われました。
再検査でも白血球数は高い状態が続いており、同時に実施した胸部レントゲン検査では肺に腫瘤が確認されています。
術前のレントゲン画像です。


肺の状態をさらに詳しく調べるため、専門施設でCT検査が実施されました。
CT検査では左肺後葉の頭側に腫瘤が確認され、画像検査の結果から肺葉ごと摘出可能と判断されました。
術前のCT画像です。


飼い主様に検査結果と治療方法をご説明し、腫瘤を含む左肺後葉の切除手術が行われました。
術後の経過は良好で、摘出した肺を病理検査に提出したところ肺腺癌と診断されています。
病理検査では悪性度は中程度、切除状態は良好のため胸腔内への腫瘍播種の可能性はないと判断されました。
しかし、今後リンパ節転移や肺内転移が起こる可能性はあるため、術後も定期的な画像検査による経過観察を継続しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
犬の肺腺癌は初期には症状が出にくく、定期的な検査を受けていなければ発見が遅れてしまうことがある病気です。
今回の症例でも肺腫瘍による明らかな症状はありませんでしたが、別の目的で行った検査をきっかけに肺の腫瘤が見つかりました。
とくに中高齢の犬では、元気や食欲に問題がなくても病気が隠れていることがあります。
定期的に健康診断を受けることは、こうした病気を早期に発見するきっかけになります。
当院では必要に応じて専門施設とも連携しながら、一頭一頭の状態に合わせた検査や治療をご提案しております。
「咳が続いている」「呼吸がいつもより速い」といった変化がみられた際には、どうぞお気軽にご相談ください。