2026/9/28
皮膚/耳科
ダックスの膿皮症の一例犬の膿皮症を治療した症例を解説
「最近やたら体を掻いている」
「皮膚に赤いブツブツができている」
「夏になると皮膚の調子が悪くなる」
このような様子が愛犬に見られたことはありませんか。
犬の皮膚トラブルの中でもとくに多いのが膿皮症です。
膿皮症は適切に治療すれば改善が見込める病気ですが、放置すると悪化や再発を繰り返すことがあります。
本記事では、膿皮症と診断されたミニチュアダックスフンドの症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚トラブルでお悩みの際の参考にしていただければ幸いです。
犬の膿皮症について
膿皮症とは皮膚に細菌が感染することで炎症が起こる病気です。
犬の皮膚に常在しているブドウ球菌などの細菌が、何らかのきっかけで過剰に増殖することで発症します。
膿皮症が発症しやすい条件の一つが高温多湿の環境です。
とくに夏場は皮膚が蒸れやすく、細菌が繁殖しやすい状態になるため、この時期に発症するケースが多く見られます。
膿皮症は皮膚バリア機能の低下や免疫機能の異常が背景にあることも多く
- アトピー性皮膚炎
- 食物アレルギー
- 内分泌疾患
- 脂漏症
などの基礎疾患を持つ犬で繰り返しやすい傾向があります。
とくに高齢になってから突然発症したり、治療しても繰り返す場合には甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患が隠れている可能性もあります。
膿皮症を繰り返さないためには、細菌感染を治療するだけでなく、背景にある疾患を見つけることが大切です。
犬の膿皮症の症状
犬の膿皮症では
- 皮膚の赤み
- 丘疹・膿疱
- 強い痒み
- 脱毛
- かさぶた・フケ
- 皮膚の色素沈着
などの症状が見られます。
膿皮症の病変は
- 腹部
- 脇
- 内股
など、毛が薄く蒸れやすい部位に出やすい傾向があります。
犬の膿皮症の診断
膿皮症の診断には皮表細胞診が重要です。
皮表細胞診はスライドガラスを皮膚に押し当てて細胞を採取し、顕微鏡で確認する検査です。
膿皮症は細菌の数や炎症細胞を確認することが、膿皮症を診断するうえでの手がかりとなります。
また、膿皮症と似た症状を示す病気として、皮膚糸状菌症や毛包虫症があります。
皮膚糸状菌症はカビの一種による感染症、毛包虫症はニキビダニと呼ばれるダニによる皮膚疾患です。
これらは膿皮症と外見上の症状がよく似ていますが、治療方法がそれぞれ異なります。
そのため、皮膚の状態に応じて皮表細胞診などの検査を行い、カビやダニなど他の原因が関与していないか確認することも大切です。
犬の膿皮症の治療
膿皮症では症状や皮膚の状態に合わせて治療方法を選択します。
膿皮症の主な治療法は
- 抗菌薬の内服
- 薬用シャンプーによるスキンケア
- 患部の被毛の除去
などです。
それぞれについて解説していきます。
抗菌薬の内服
膿皮症では症状や感染の程度に応じて抗菌薬が使用されます。
一般的に一定期間の投与が必要となり、皮膚の状態を確認しながら治療期間を決めていくことが大切です。
膿皮症の症状が改善した後も、状態によっては一定期間抗菌薬を継続することがあります。
皮膚の見た目が良くなったからといって自己判断で薬を中止せず、獣医師の指示に従って治療を続けましょう。
痒みが強い場合には抗菌薬と並行して痒みを抑える薬が使用されることもあります。
薬用シャンプーによるスキンケア
抗菌・抗真菌成分を含む薬用シャンプーを使用し、皮膚の細菌や汚れを取り除くことも治療方法の一つです。
皮膚を清潔に保つことで膿皮症の改善につながります。
ただし、適切なシャンプーの頻度は皮膚の状態や膿皮症の程度によって異なります。
自己判断で回数を増やさず、獣医師と相談しながら適切な頻度で行うことが重要です。
患部の被毛の除去
被毛によって患部が蒸れると炎症が長引く原因になることがあります。
また、毛に覆われていると皮膚の状態を確認しにくく、シャンプーなどによるケアも行いにくくなります。
そのため、必要に応じて患部周辺の被毛をバリカンで刈ることで皮膚を清潔に保ちやすくなります。
実際の症例:ミニチュアダックスフンドの膿皮症
今回ご紹介するのは、14歳の避妊済み雌のミニチュアダックスフンドの症例です。
「2週間前から体を痒そうにしている」とのことで来院されました。
身体検査では腹部を中心に広範囲の丘疹や膿疱が認められました。
皮表細胞診を実施したところ、多数の細菌が確認されています。
皮膚の状態や検査結果から膿皮症と診断されました。
なお皮膚糸状菌症や毛包虫症との鑑別も行い、いずれも認められませんでした。

初診時には皮疹がみられる部分の被毛をバリカンで刈りました。
治療には抗菌薬と痒みを抑えるアポキルを使用しています。
どちらも2週間分を処方し、再診時に皮膚の状態を確認する方針としました。
2週間後の再診では症状の改善がみられました。
そのため抗菌薬とアポキルを追加で2週間継続しています。
さらに皮膚を清潔に保つためのスキンケアとしてマラセブシャンプーを処方しました。
初診から約1か月後の再診では、丘疹や膿疱が大幅に減少していました。
皮膚の赤みも落ち着いており、初診時と比べて皮膚の状態は顕著に改善しています。

現在も抗菌薬とアポキルによる治療を継続しながら、経過を観察しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
犬の膿皮症は適切な治療を行えば改善が期待できる病気ですが、症状が落ち着いた後も治療を継続することが再発予防のうえで重要です。
また繰り返す膿皮症の背景にはアトピーや内分泌疾患などが隠れていることがあるため、原因の精査も大切です。
当院では皮膚科診療にも力を入れており、一頭一頭の状態に合わせた治療プランをご提案しております。
愛犬の皮膚トラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。