症例紹介

Case

2026/9/10

整形外科

犬のパテラの一例犬のパテラに対して手術を行なった症例を解説

「足をあげてスキップするように歩く」
「急に後ろ足をひきずるようになった」
「小型犬もパテラになるの?」
このような経験やご不安をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬のパテラは小型犬に多く見られる整形外科疾患のひとつです。
パテラは進行すると歩行に大きな支障をきたすことがあります。

本記事では、パテラに対して手術を行ったミックス犬の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の足の異変に気づいた際の参考にしていただければ幸いです。

犬のパテラについて

パテラとは本来、膝蓋骨を指す言葉ですが、通称として膝蓋骨脱臼の意味で使われます。

膝蓋骨とはいわゆる膝のお皿の骨のことですね。
膝蓋骨は大腿骨の前面にある滑車溝と呼ばれる溝の中に収まっており、スムーズな膝の動きを助けています。
パテラの犬ではこの膝蓋骨が溝から内側または外側に脱臼してしまいます。
パテラは先天的な骨格の問題が原因であることが多く、とくに

  • チワワ
  • ポメラニアン
  • トイプードル

などの小型犬に多いです。
パテラは膝蓋骨の状態によって

  • グレードⅠ:手で押したときだけ脱臼するが、自然に元に戻る
  • グレードⅡ:自然に脱臼することがある
  • グレードⅢ:常に脱臼している状態であり、手で戻せるがすぐにまた外れる
  • グレードⅣ:常に脱臼しており、手でも戻せない

に分類されます。
パテラはグレードが高いほど脱臼の程度が重く、手術が必要になる可能性が高まります。
パテラは放置すると前十字靭帯断裂や関節炎に繋がることがあるため、早期発見・早期治療が重要です。

犬のパテラの症状

犬のパテラでは

  • スキップのように歩くようになる
  • 後ろ足をひきずる
  • 足を触られるのを嫌がる
  • 座り方がおかしくなる
  • 運動を嫌がる

といった症状が見られます。
グレードⅠ〜Ⅱでは症状が軽く、日常生活に大きな支障がないこともあります。
しかしそのまま放置すると関節炎や前十字靱帯断裂などの二次的な問題が起こることがあるため、早めに受診することが大切です。

犬のパテラの診断

犬のパテラの診断は主に触診やレントゲン検査から診断されます。
触診では膝関節を手で操作し、膝蓋骨がどの程度ずれるかを確認してパテラのグレードが判断されます。
とくに膝蓋骨が外れるときに痛みがあるかどうかも重要なポイントです。
レントゲン検査では膝関節の骨の形状や脛骨の変形などが確認されます。
手術が必要な場合は術式の選択にも役立つ重要な検査です。

犬のパテラの治療

犬のパテラの治療には内科療法と外科療法があります。
それぞれについて解説します。

内科療法

パテラのグレードⅠ〜Ⅱで症状が軽い場合は、消炎鎮痛薬や関節サプリメントによる内科療法での管理が選択されることがあります。
ただし内科療法では脱臼そのものを治すことはできず、痛みや炎症を抑えて症状を和らげる対症療法という位置付けになります。

外科療法

パテラのグレードⅢ以上や症状が強い場合は手術が推奨されます。
手術では膝関節の状態に応じて

  • 滑車溝造溝術:滑車溝を深く削り、膝蓋骨がずれにくくする手術
  • 関節縫縮:緩んだ関節包を縫い縮めて関節を安定させり手術
  • 縫工筋切断:膝の動きを妨げている筋肉の一部を切離する手術
  • 脛骨粗面転移術:脛骨の一部の位置をずらし、膝蓋骨の軌道を整える手術
  • 矯正骨切り術:変形した骨を切って形を整え、正しい位置関係に矯正する手術

などの術式を組み合わせて膝関節の安定化を図ります。
手術後はリハビリが必要になることも多いです。

実際の症例:ミックス犬のパテラ

今回ご紹介するのは、2歳の避妊済み雌のチワワとポメラニアンのミックス犬の症例です。
この症例では右後肢がグレードⅢ、左後肢がグレードⅡ〜Ⅲと診断されました。
症状が重い右後肢から手術を実施することになりました。
手術前の膝関節のレントゲン写真です。

膝蓋骨脱臼の手術前のレントゲン画像

膝蓋骨脱臼の手術前のレントゲン画像

手術は全身麻酔下で行われました。
手術では

  • 滑車溝造溝術
  • 縫工筋切断
  • 関節縫縮
  • 脛骨粗面転移術

が実施されました。

滑車溝造溝術の様子

術後のレントゲンで骨の位置と固定状態を確認しました。

膝蓋骨脱臼の手術後のレントゲン画像

膝蓋骨脱臼の手術後のレントゲン画像

術後1か月半の時点では歩行も問題なく、順調に回復しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
犬のパテラは小型犬に多く見られる病気ですが、グレードが高い場合は関節炎や前十字靱帯断裂などの二次的な問題に発展することがあります。
今回の症例のように適切なタイミングで手術を行うことで良好な回復が期待できます。

当院では整形外科診療にも力を入れており、一頭一頭の状態に合わせた治療プランをご提案しております。
「足をあげてスキップするように歩く」「後ろ足をひきずっている」といった様子が見られた際は、どうぞお気軽にご来院ください。

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