症例紹介

Case

2026/9/7

眼科

犬の角膜上皮びらんの一例犬の角膜上皮びらんを治療した症例を解説

「トリミング後から目が開かない」
「急に目を擦るようになった」
「目が充血して涙や目やにが増えた」
このような様子が愛犬に見られたことはありませんか。
犬の目のトラブルは日常的に起こりうるものですが、放置すると重症化することがある重要なサインです。

本記事では、トリミング後に目の異常が現れたミックス犬の症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の目に異変があった際の参考にしていただければ幸いです。

犬の角膜上皮びらんについて

角膜上皮びらんとは角膜の最も表面にある上皮層が傷ついて欠損した状態のことをいいます。
角膜とは眼球の表面を覆う透明な膜のことですね。
犬の角膜上皮びらんの原因は

  • 外傷
  • 目に入った異物
  • 乾性角結膜炎による角膜の乾燥
  • 内分泌疾患や免疫介在性疾患による角膜障害

などです。
角膜上皮びらんをそのままにしておくと、目の感覚に関わる三叉神経が刺激されることによる反射性のぶどう膜炎が起こることがあります。
ぶどう膜炎とは眼球内の炎症のことで、目の痛みを引き起こします。
また細菌感染によって角膜上皮びらんがより重症化すると、角膜潰瘍や角膜穿孔など視力に関わる深刻な状態に進行するケースも少なくありません。
角膜上皮びらんは早期に適切な治療を開始することが非常に重要です。

犬の角膜上皮びらんの症状

犬の角膜上皮びらんでは

  • 目をしょぼしょぼさせる
  • 目を擦る
  • 目が充血する
  • 目やにや涙が増える

といった症状が見られます。
これらの症状は角膜に傷がついたことで痛みや刺激が生じているサインです。
症状が出ても元気そうに見えることがあり、様子を見てしまうケースも少なくありません。
「なんとなく目がおかしい」と感じたら、放置せずに早めに受診することをおすすめします。

犬の角膜上皮びらんの診断

犬の角膜上皮びらんの診断は角膜の傷を確認するフルオレセイン検査により行われます。
フルオレセイン検査はフルオレセインという蛍光色素を点眼し、青色光を当てることで角膜の傷を確認する検査です。
傷のある部分が緑色に染まるため、傷の範囲や深さを確認することができます。
その他にも

  • 眼圧測定
  • シルマー検査
  • スリットランプ検査

などが行われることがあります。
これらは角膜上皮びらんの原因となる病気がないか確認するために行われる検査です。

犬の角膜上皮びらんの治療

犬の角膜上皮びらんの治療には

  • 抗菌点眼薬の使用
  • プロテアーゼ阻害薬
  • 消炎鎮痛薬の投与
  • エリザベスカラーの装着

などがあります。
それぞれについて解説します。

抗菌点眼薬の使用

抗菌点眼薬は細菌感染の予防と角膜の治癒を促すために使用します。
感染が抑えられれば、角膜上皮の治癒は比較的早く、3〜7日で改善することが多いです。

プロテアーゼ阻害薬の使用

プロテアーゼ阻害薬は角膜の傷が広がるのを防ぐために使用する点眼薬です。
炎症によって産生されるプロテアーゼが角膜組織を溶かすのを抑え、治癒を助ける効果があります。

消炎鎮痛薬の投与

目の痛みや炎症を抑えるために消炎鎮痛薬を使用します。
目の痛みが和らぐことで、犬が目を擦る行動も軽減されます。

エリザベスカラーの装着

犬が目を擦ることで傷が悪化するのを防ぐため、エリザベスカラーを装着します。
治癒が完了するまでの間、自己損傷を防ぐことが回復を早めるうえで非常に重要です。

実際の症例:ミックス犬の角膜上皮びらん

今回ご紹介するのは、16歳のミックス犬の症例です。
「昨日、トリミングを受けた後から左目が開かない」とのことで来院されました。
来院時の目の状態を確認したところ左目の充血と眼脂が認められ、目を開けようとしない様子が確認されました。

来院時の目の様子

フルオレセイン検査を実施したところ、角膜に傷が蛍光色に染まる所見が確認されました。

フルオレセイン検査の様子
これらの検査結果からトリミング中の外傷または異物による角膜上皮びらんとの診断でした。
消炎鎮痛薬の注射を行い、抗菌点眼薬とプロテアーゼ阻害薬の点眼を開始しました。
また自己損傷を防ぐためにエリザベスカラーも装着しています。
3日後の再診では良化傾向が確認され、治療の効果が得られていることが確認されました。
今回の症例は主訴と治療への反応から、トリミングによる外傷性または異物による角膜障害と考えられました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
犬の角膜上皮びらんは、適切な治療を行えば比較的早期に治癒が期待できる病気です。
一方で放置すると細菌感染やぶどう膜炎など、より重篤な状態へ進行するリスクがあります。
とくに今回のようにトリミング後に目の異常が現れた場合、早めに動物病院を受診することが大切です。
治療を行っても角膜が治癒しない場合は、乾性角結膜炎や免疫介在性疾患など背景にある原因疾患の精査が必要になります。

当院では角膜上皮びらんなどの眼科診療に力を入れております。
「急に目を開けなくなった」「目を擦っている」といった様子が見られた際はどうぞお気軽にご来院ください。

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