症例紹介

Case

2026/9/4

消化器科

犬のタマネギ中毒の一例犬がタマネギを食べる危険性について解説

タマネギの輪切り断面

タマネギは犬に与えてはいけない食材のひとつです。
人間は日常的にタマネギを食べますが、犬が食べると中毒をおこして嘔吐や血尿などさまざまな症状を示すことがあります。

「床に落ちたタマネギを犬が食べてしまった」
「家族が誤ってタマネギを犬に食べさせてしまった」
このようなことがあると心配ですよね。

今回は犬のタマネギ中毒について、当院で実際に治療を行った症例を紹介しながら解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、犬のタマネギ中毒の危険性について理解を深めていただければ幸いです。

犬のタマネギ中毒とは

犬のタマネギ中毒とは、タマネギに含まれる成分が赤血球を壊してしまうことで溶血性貧血がおこる病気です。
溶血性貧血は酸素の運搬を行う赤血球が破壊されておこる貧血で、放置すると命の危険があります。

タマネギ中毒はタマネギ以外にも

  • ネギ
  • ニンニク
  • ニラ

などのネギ科の植物を犬が食べることで発症する可能性があります。
これらの食材は犬に与えないようにしましょう。

犬のタマネギ中毒の中毒量

「犬はどれくらいのタマネギを食べたら中毒になるの?」
と疑問に思われる方も多いと思います。
犬では体重1kgあたり5〜30gのタマネギを食べるとタマネギ中毒になるといわれています。
体重が5kgの犬なら、小さなタマネギを4分の1個ほどを食べると中毒になる可能性があるということです。

しかしこの中毒量はあくまでも目安であり、犬によってはもっと少量でも中毒症状を示す場合もあります。
「少しくらい食べても大丈夫だろう」と油断せずに、日頃から犬がタマネギを食べてしまわないよう十分注意してください。

犬のタマネギ中毒の症状

犬のタマネギ中毒の症状は

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 血尿
  • 黄疸

などです。

軽症の場合は嘔吐や下痢のみがみられますが、悪化して溶血性貧血が進むと黄疸や血尿がみられるようになります。
黄疸は歯茎や目の結膜などが黄色く見える症状です。
黄疸がみられるような重篤なタマネギ中毒では、溶血性貧血で壊れた赤血球を処理する肝臓に負担がかかるため、血液検査では肝数値の著しい上昇がみられることが多いです。
タマネギ中毒でみられる血尿は「チョコレート色の尿」と表現されるように、赤褐色の尿になります。

タマネギの摂取量が大量であったときは当日中に症状が認められることもありますが、多くの場合はタマネギを食べてから数日後に症状がみられます。
「犬の突然の下痢や嘔吐が、数日前に食べたタマネギのせいだった」
ということも少なくありません。
犬がタマネギを食べてしまったら、すぐに症状がなくても動物病院に相談しましょう。

犬のタマネギ中毒の治療

犬のタマネギ中毒の治療には

  • 催吐処置
  • 胃洗浄
  • 点滴
  • 投薬

などがあります。

タマネギ中毒に対する解毒剤のような薬は無いため、犬がタマネギを食べてしまったらなるべく早く吐かせることが大切です。
タマネギを食べてから2時間以内であれば催吐処置が適応となります。
吐かせるだけでは不十分と判断された場合は胃洗浄といって、胃の中を直接洗浄する処置が必要になることもあります。

犬がタマネギを食べてから時間が経っていて、嘔吐や下痢などの症状が出ている場合はそれに対する対症療法が必要です。
対症療法では点滴や肝臓の働きを助ける薬の投与を行い、犬の状態が回復してくるのを待ちます。

実際の症例

ここからは当院で実際に治療を行った犬のタマネギ中毒の症例をご紹介いたします。
症例は10ヶ月のマルチーズの女の子です。
この犬は下痢と嘔吐で来院し、その時点では元気や食欲もあったため対症療法で経過をみていました。
3日後に血液検査を行うと原因不明の貧血と肝数値の上昇があり、点滴や内服薬での治療を行いましたが、点滴終了から5日で嘔吐と下痢の症状が再発してしまいました。

この写真はその時にみられた黄疸の様子です。

タマネギ中毒でみられた犬の黄疸

 

お腹の皮膚や歯肉などの粘膜が黄色く変色していることがわかります。

これは同じ犬の血液です。

タマネギ中毒でみられた犬の溶血

 

通常であれば透明なはずの上澄みが真っ赤になっていることがわかります。
これは溶血が起きていることを示しています。

以上の経過から原因は不明のまま入院治療が開始されました。
症状と経過からタマネギ中毒を疑って飼い主様にタマネギなどを食べてないか確認したところ、ご家族が犬にタマネギを与えていたことが分かりました。
これまでの症状はタマネギ中毒が原因である可能性が高いということになります。

この犬は入院10日目で貧血の値と肝数値が改善し、元気と食欲も回復したため退院となりました。
肝数値はまだ完全に正常とはいえないため、お家で数日間肝臓の働きを助ける薬の投薬などを継続しながら経過観察を行う必要があります。

この症例のように飼育者が複数人いる家庭では、知らない間に犬がタマネギを口にしていることがあります。
タマネギに限らず、犬に与えてはいけない食べ物を家族の共通認識にしておくことがとても大切です。

まとめ

犬のタマネギ中毒は最悪の場合死に至る可能性もありますが、しっかりと治療を受けることで回復する犬が多いです。
犬のタマネギ中毒では嘔吐や下痢などのよくある症状の他にも、黄疸や血尿など重篤な症状を引き起こすことがあります。
また、犬によってはほんの少しのタマネギを食べただけでもタマネギ中毒を発症する可能性があります。

「犬がタマネギを食べてしまった」
「原因不明の嘔吐と下痢が続いていて、目やお腹が黄色い気がする」
このようなときはお早めにご相談ください。

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