2026/8/18
泌尿器/生殖器科
犬の精巣腫瘍の一例犬の精巣腫瘍に対して去勢手術を行なった症例を解説
「健診で精巣が大きくなっていると言われた」
「睾丸の左右の大きさが違う気がする」
「未去勢だけど、何か病気になりやすいの?」
このような経験やご不安をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
未去勢の雄犬では加齢とともに精巣に腫瘍が発生するリスクがあります。
本記事では健診をきっかけに精巣腫瘍が発見されたウェルシュコーギーの症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の異変に気づいた際の参考にしていただければ幸いです。
犬の精巣腫瘍について
犬の精巣腫瘍は未去勢の中高齢雄犬に比較的多く見られる病気です。
精巣腫瘍は主に3種類に分けられます。
いずれの精巣腫瘍も早期発見・早期手術が重要で、腫瘍の種類や性質の確定には摘出後の病理検査が必要です。
それぞれの精巣腫瘍について解説します。
セルトリ細胞腫
セルトリ細胞腫は精子の形成を助ける細胞から発生する腫瘍です。
女性ホルモンを分泌することがあり、乳腺の発達や脱毛などのホルモン関連症状が現れることがあります。
ライディッヒ細胞腫
ライディッヒ細胞腫は男性ホルモンを分泌する間細胞から発生する腫瘍です。
ほとんどの場合で良性とされており、予後は良好なことが多い腫瘍になります。
精上皮腫
精上皮腫は精子のもとになる細胞から発生する腫瘍です。
一般的に悪性度は低いとされています。
犬の精巣腫瘍の症状
犬の精巣腫瘍の初期は無症状であることが多く、健診の視診やエコー検査で偶然発見されるケースも多いです。
精巣腫瘍のサインには
- 片側または両側の精巣の腫大
- 精巣のサイズの左右差
- 精巣の硬さや形の変化
- ホルモン分泌による脱毛や乳腺の発達
などがあります。
腫瘍が大きくなると陰嚢ごと腫大し、歩行や日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
また腫瘍の種類によっては女性ホルモンが過剰に分泌され、血液を作る機能が低下する骨髄抑制を引き起こすこともあるため注意が必要です。
日頃から精巣に異変がないか確認する習慣が精巣腫瘍の早期発見につながります。
犬の精巣腫瘍の診断
犬の精巣腫瘍の診断には以下の検査が行われます。
視診・触診
視診・触診では精巣の
- 大きさ
- 硬さ
- 左右差
などが確認されます。
腫大が明らかな場合は視診だけでも異常に気づくことが可能です。
超音波検査
超音波検査では精巣内部の構造が確認できます。
モザイク像と呼ばれる腫瘍特有の血流パターンが確認されることがあり、診断の手がかりとなります。
病理検査
病理検査では摘出した精巣を専門機関で調べ、腫瘍の種類や性質が確定されます。
画像検査だけでは腫瘍の良性・悪性を確定できないため、摘出後の病理検査が非常に重要です。
犬の精巣腫瘍の治療
精巣腫瘍の治療は精巣を摘出する去勢手術が第一選択です。
腫瘍が精巣内に留まっている段階で摘出できれば、根治が期待できます。
腫瘍が非常に大きくなった場合は腫大した陰嚢の皮膚も合わせて切除が必要になることがあります。
手術後は摘出した精巣を病理検査に提出し、腫瘍の種類と性質を確認することが重要です。
病理検査の結果によって、その後の経過観察の方針が決まります。
実際の症例:ウェルシュコーギーの精巣腫瘍
今回ご紹介するのは、8歳の未去勢雄のウェルシュコーギーの症例です。
健診で来院された際に視診で精巣の著しい腫大が確認されました。

続いてエコー検査を行ったところ、精巣内部に腫瘍特有のモザイク像が確認されました。

腹部や他臓器に明らかな異常所見はなく、飼い主様にご説明のうえ去勢手術を実施することになりました。
手術は全身麻酔下で行われました。
腫大した精巣を摘出したうえで、引きずるほどに腫大していた陰嚢の皮膚も合わせて切除されています。

摘出された精巣の様子です。

左右で大きさが大きく異なる精巣が確認できます。
陰嚢皮膚を含めた切除後の縫合部位の様子です。

摘出した精巣を病理検査に提出した結果、ライディッヒ細胞腫と診断されました。
ライディッヒ細胞腫はほとんどの場合で良性とされており、今回も腫瘍が精巣内に留まっていることが確認されました。
術後の経過は良好で、現在は元気に過ごしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
犬の精巣腫瘍は初期には無症状で気づきにくい病気ですが、定期的な健診やエコー検査によって早期発見につなげることができます。
今回の症例のように健診をきっかけに発見し早期に手術を行うことで、良好な回復が期待できます。
当院では精巣腫瘍に対する去勢手術にも対応しております。
未去勢の雄犬で「精巣の大きさが気になる」「左右の大きさが違う」といった変化に気づいた際は、お気軽にご相談ください。