症例紹介

Case

2026/8/18

泌尿器/生殖器科

犬の子宮蓄膿症の一例犬の子宮蓄膿症に対して手術を行なった症例を解説

「最近、ご飯を食べたがらない」
「元気がなくてぐったりしている」
「水をよく飲むようになった」
未避妊の雌犬にこのような様子が見られたら子宮蓄膿症の可能性があります。
子宮蓄膿症は中高齢の未避妊雌犬に多く見られる病気で、早期に治療しなければ命に関わることもある緊急性の高い病気です。

本記事では、子宮蓄膿症の危険性と実際に当院で手術を行った症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の異変に気づいた際の参考にしていただければ幸いです。

犬の子宮蓄膿症について

犬の子宮蓄膿症とは子宮の内部に細菌が感染し、膿が溜まった状態のことです。
発情後の犬はホルモンバランスの変化によって子宮内膜が肥厚し、子宮内に細菌が繁殖しやすくなります。
子宮蓄膿症は中高齢の未避妊雌犬に多く見られ、発情終了後1〜2か月以内の犬に発症することが多い病気です。
発症すると急速に全身状態が悪化するため早期発見・早期治療が非常に重要になります。
犬に妊娠の予定がない場合は、若齢のうちに避妊手術を行うことで子宮蓄膿症が予防できます。

犬の子宮蓄膿症の種類

犬の子宮蓄膿症には2つのタイプがあります。
どちらのタイプの子宮蓄膿症かによって治療方法や緊急度が変わります。

開放型

開放型は子宮頸管が開いており、膿が膣から外に排出されるタイプです。
開放型では外陰部からの分泌物で犬の異変に気づくことがあります。

閉鎖型

閉鎖型は子宮頸管が閉じており、膿が外に出ないタイプです。
閉鎖型では腹部が膨らみ、全身症状が急激に悪化することがあります。

犬の子宮蓄膿症の症状

犬の子宮蓄膿症の症状には

  • 食欲が低下する
  • 元気がなくなる
  • 飲水量と尿量が増える
  • 嘔吐や下痢をする
  • 外陰部からの膿状の分泌物が出る
  • お腹が膨れる

などが挙げられます。
これらの症状は他の病気でも見られるため、「年のせいかな」と見過ごされてしまうことも少なくありません。
発情後1〜2か月の未避妊雌犬でこうした症状が見られた場合は、早めに受診することをおすすめします。
とくに閉鎖型の場合は外からわかるサインが少なく、気づいたときには重症化していることもあるため注意が必要です。

犬の子宮蓄膿症の診断

犬の子宮蓄膿症の診断には以下の検査が行われます。

血液検査

血液検査では白血球数の増加やCRPと呼ばれる炎症反応の上昇などが確認されます。
全身への感染の広がりや臓器への影響を確認するうえでも重要な検査です。

腹部超音波検査

腹部超音波検査では子宮の腫大や子宮内部の液体貯留がないか確認されます。
子宮がどの程度膿で満たされているかを評価するのに有用です。

レントゲン検査

レントゲン検査では腹腔内を占拠するように拡張した子宮の状態を確認するために行われます。
子宮だけでなく腹部全体の状況を把握するうえで役立ちます。

犬の子宮蓄膿症の治療

犬の子宮蓄膿症の治療には内科療法と外科療法があります。

内科療法

内科療法はホルモン剤などを使用して子宮頸管を開き、膿を排出させる方法です。
内科療法のみで一時的に膿を排出させるだけでは子宮蓄膿症の再発リスクが残ります。
そのため子宮蓄膿症の根治的な治療には外科療法が推奨されます。

外科療法

外科療法は子宮と卵巣を摘出する子宮卵巣全摘術が行われる治療法です。
外科療法では感染した子宮を取り除くことにより症状の改善が見込め、子宮蓄膿症の再発のリスクもなくなります。
子宮蓄膿症は全身状態が悪化する前に手術を行うほど、術後の犬の回復がスムーズです。

実際の症例:パピヨンの子宮蓄膿症

今回ご紹介するのは、「食欲と活動性が低下している」とのことで来院された10歳の未避妊雌のパピヨンです。
血液検査では総白血球数の増加とCRPの上昇が確認され、全身的な炎症反応が確認されました。
続いて腹部超音波検査とレントゲン検査では子宮の腫大と子宮内部の液体貯留が観察されました。
術前の超音波画像です。

超音波で確認された拡張した子宮   
術前のレントゲン画像です。

レントゲンで確認された拡張した子宮

レントゲンで確認された拡張した子宮

これらの所見から子宮蓄膿症と診断し、緊急で子宮卵巣全摘術が実施されました。
手術は全身麻酔下で行い、膿の溜まった子宮と卵巣が摘出されています。
摘出された子宮と卵巣です。

摘出された子宮と卵巣
術後は入院管理のもと、点滴・抗菌薬の投与を行いながら慎重に経過が観察されました。
治療に伴い犬の元気・食欲ともに回復し、その後は無事に退院しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
犬の子宮蓄膿症は発見が遅れると命に関わる状態に進行することがある病気です。
早期に手術を行えば今回の症例のように良好な回復が期待できます。

当院では子宮蓄膿症のような緊急手術にも対応しております。
未避妊の雌犬で「食欲がない」「元気がない」といった様子が見られた場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

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