症例紹介

Case

2026/8/13

整形外科

柴犬の前十字靱帯断裂の一例犬の前十字靱帯断裂に対してLFS法を行なった症例を解説

「急に後ろ足をひきずるようになった」
「座るときに後ろ足が外に流れる」
「以前より足を地面につけない」
このような様子が愛犬に見られたことはありませんか。

犬が後肢をひきずる原因は様々ですが、中でも多いのが前十字靱帯断裂です。
本記事では、前十字靱帯断裂した柴犬に対して当院で手術を行った症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の後肢の異変に気づいた際の参考にしていただければ幸いです。

犬の前十字靱帯断裂について

前十字靱帯とは膝関節の内部にある靱帯で、太ももの骨である大腿骨とすねの骨である脛骨をつなぎ、膝関節が前後にずれないよう安定させる役割を担っています。
この靱帯が断裂すると膝関節の安定性が失われ、強い痛みと足を引きずる跛行が生じます。

犬の前十字靱帯断裂の主な原因は

  • 加齢による靭帯の変性
  • 外傷性による靭帯の損傷
  • 内分泌異常による靭帯の変性

などです。

前十字靭帯は加齢により靭帯が少しずつ弱くなり断裂するケースが最も多いです。
前十字靭帯断裂は比較的若い犬でも激しい運動や急な方向転換などで起こることがあります。
前十字靭帯の変性は内分泌異常により促進することがあるので、定期的な健診で内分泌の異常がないか確認することも大切です。

犬の前十字靱帯断裂の症状

犬が前十字靱帯を断裂すると

  • 後肢をひきずる
  • 後肢を挙げる
  • 座ったときに患肢が外側に流れる
  • 運動を嫌がる

といった症状が見られます。
前十字靭帯断裂の症状は急に現れることも、じわじわと悪化していくこともあります。
「なんとなく足の運びがおかしい」という段階でも早めに動物病院を受診しましょう。

犬の前十字靱帯断裂の診断

犬の前十字靱帯断裂の診断には以下の検査が行われます。

ドロワー試験

ドロワー試験は膝関節を手で操作し、脛骨が前方にずれる「引き出し運動」が確認できるかを調べる検査です。
前十字靱帯が断裂していると、脛骨が前方に異常にずれる感触が確認されます。

レントゲン検査

レントゲン検査では

  • 関節内の液体貯留
  • 骨の変化
  • 関節炎

の程度などが確認されます。
前十字靱帯自体はレントゲン検査では写りませんが、関節の状態を把握するうえで重要な検査です。

犬の前十字靱帯断裂の治療

犬の前十字靱帯断裂の治療には内科療法と外科療法があります。
それぞれについて解説していきます。

内科療法

内科療法は消炎鎮痛薬の投与や安静・体重管理などで症状を和らげる方法です。
ただし、内科療法だけでは膝関節の不安定性そのものは改善されません。

放置や内科療法のみで経過をみると

  • 関節炎の進行
  • 半月板の損傷
  • 変形性関節疾患の継発
  • 筋肉の萎縮

といった二次的な問題が起こることがあります。

外科療法

前十字靭帯断裂の根治的な治療には外科手術による膝関節の安定化が推奨されます。
代表的な手術方法にTPLO法とLFS法があります。

TPLO法とは、すねの骨の一部を切って角度を変えることで、靭帯がなくても膝が安定して動けるように関節の構造そのものを作り直す方法です。
膝関節が安定しやすく、再手術のリスクが少ない傾向があります。

LFS法とは、人工材料を用いて大腿骨と脛骨を関節の外側でつなぎ、膝関節の安定性を確保する方法です。
骨を切らずに行える術式であり、高齢の患者にも適応しやすい手術です。

実際の症例:柴犬の前十字靱帯断裂

今回ご紹介するのは、「2週間前から左後肢をひきずっており、今朝からひどくなった」とのことで来院された12歳の柴犬の症例です。
ドロワー試験とレントゲン検査から左膝関節の不安定性と膝関節内の変化が確認されました。
これらの所見から左前十字靱帯断裂と診断し、飼い主様にご説明のうえ手術を実施することになりました。
術前レントゲン画像です。

術前の患肢のレントゲン画像

LFS法にて人工材料を用いて大腿骨と脛骨を結び、膝関節の安定化が行われました。
断裂した前十字靭帯を確認し、靭帯の切除が行われている様子です。

断裂した靭帯を切除している様子

人工材料を用いて膝関節の安定化が行われました。

LFS法を行なっている様子

LFS法後の膝関節の様子です。

LFS法後の膝関節の様子

術後のレントゲン検査で人工材料による固定が良好であることが確認されました。

術前、術後の患肢のレントゲン画像

術後はリハビリを含む入院管理を行い、徐々に患肢を地面に着けるようになりました。

現在は経過良好で、日常生活を元気に送っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

犬の前十字靱帯断裂は、放置すると関節炎や半月板損傷などの二次的なダメージが進行する病気です。
今回の症例のように12歳の高齢犬でも、適切な手術と術後管理によって良好な回復が期待できます。
「後ろ足をひきずっている」「座り方がおかしい」といった様子が見られた場合は、お早めにご相談ください。

当院では整形外科の診療にも力を入れており、一頭一頭の状態に合わせた治療プランをご提案しております。
愛犬の足のトラブルでお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。

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