症例紹介

Case

2026/7/5

消化器科

石を誤飲して内視鏡での胃内異物摘出を行った豆柴の1例犬の誤飲について

犬は好奇心旺盛な生き物です。
特に子犬のときは何でもかんでも口に入れてしまって大変ですよね。
また、成犬になっても誤飲や誤食を繰り返してしまう犬も少なくありません。
「散歩中に何かを拾って口に入れて、そのまま飲み込んでしまった」
「床に敷いているマットの端っこを噛んで飲み込んだみたいだけど、吐いたりしていなければ様子をみていいかな?」
このような経験やお悩みをお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

犬の異物誤飲は最初は症状がなくても、時間が経つと命に関わる重篤な病態を引き起こすこともあります。

今回は犬の誤飲の危険性と、実際に当院で内視鏡による異物摘出を行った症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の緊急事態に備えましょう。

犬の異物誤飲とはどんな状態?

犬の異物誤飲とは、本来食べるべきではないものを飲み込んでしまうことです。
犬が誤飲する異物には

  • おもちゃ
  • 靴下
  • タオル
  • マット
  • 竹串
  • 果物の種
  • ボタン電池

などがあります。
特に子犬は好奇心旺盛なため、さまざまなものを口に入れてしまいます。
また成犬でも誤飲癖のある犬では繰り返し異物を飲み込むことが多いです。

誤飲した異物は小さくても安全とは限りません。
胃の中にとどまっている間は症状がほとんど出ないこともありますが、小腸へ移動すると腸閉塞や消化管穿孔を引き起こすことがあります。
その結果、命に関わる状態へ進行することもあるため注意が必要です。

犬の異物誤飲の症状

犬の異物誤飲では異物の種類や大きさ、存在する場所によって症状が異なります。
犬の異物誤飲でよくみられる症状は

  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 腹痛
  • 下痢
  • よだれが増える

などです。

異物は胃の中にあるだけでは症状がほとんど出ないこともあります。
特に小さな石やマットの破片などは胃内に長期間存在していても目立った症状が出ないことが多いです。
そのため「元気だから大丈夫そう」と判断してしまうケースも少なくありません。
しかし異物が胃の出口である幽門部や小腸へ移動して閉塞を起こすと、頻回の嘔吐や脱水がみられるようになります。
さらに異物が消化管を傷つけて消化管穿孔が起こると、腹膜炎や循環血液減少性ショックなどの危険な病態につながり緊急手術が必要になることもあります。

犬の異物誤飲の検査

犬の異物誤飲では画像検査が重要になります。
犬の異物誤飲で行う検査は

  • X線検査
  • 超音波検査
  • 内視鏡検査

などです。

石や金属などの異物はX線検査で確認できることが多いです。
布やゴムなどはX線で見えないこともあるため、超音波検査を組み合わせて診断します。
また内視鏡検査では胃の中を直接観察できるため、異物の有無や摘出可能かどうかを評価できます。

犬の異物誤飲の治療

犬が誤飲した異物が胃の中に存在し、形状が鋭利でない場合には催吐処置を行うことがあります。
催吐処置とは薬を使って吐かせる治療です。

催吐処置で異物を安全に吐き出せれば麻酔や手術を避けることができます。
しかし

  • 異物が催吐処置で排出されない
  • 異物が大きい
  • 異物が食道を傷つける可能性がある
  • 異物の誤飲から時間が経過している

このような場合には内視鏡による摘出の検討が必要です。

内視鏡で摘出できれば開腹手術を回避できるため、犬の体への負担を抑えることができます。
時間が経って異物が十二指腸より先へ移動してしまうと内視鏡での摘出が難しくなります。
その場合は腸切開や腸管切除・吻合などの外科手術が必要になることもあり、犬の体に対する侵襲性は大きいです。

犬の誤飲が疑われた場合は様子を見るのではなく、早期に診断を受けることが重要です。

犬の異物誤飲の予防策

犬の誤飲を防ぐためには生活環境の管理が欠かせません。
特に子犬や誤食癖のある犬では注意が必要です。

犬の誤飲予防のポイントとして

  • 犬の届く場所に物を置かない
  • おもちゃの破損を定期的に確認する
  • 散歩中は拾い食いをさせない
  • トレーニングを行う

などがあります。

特に犬の散歩中の石や木の実の拾い食いは意外と多くみられます。
自己流でのトレーニングが難しい場合はドッグトレーナーなどの専門家を頼るのもいいでしょう。
「うちの子は大丈夫」と思わず、日頃から注意して観察することが大切です。

実際の症例

今回ご紹介するのは4ヶ月齢の豆柴の女の子です。
「2〜3日前から嘔吐している」とのことで来院されました。
すでに他院を受診しており、X線検査で胃の中に石が確認されていました。
他院では催吐処置が実施されましたが、石を排出することができませんでした。
このように大きな石は催吐処置で排出されないことが多いです。

当院で改めて検査を行い、内視鏡による摘出を実施することとなりました。
これが処置前のX線検査画像です。

石を飲み込んだレントゲン画像

胃の中に大きな石があることがわかります。
内視鏡で胃の中を観察したところ、胃内に石が存在していることを確認しました。
これは内視鏡での異物摘出中の画像です。

内視鏡で見た時の胃の中の石
専用の鉗子を用いて慎重に石を把持し、無事に摘出することができました。
これは異物摘出後のX線画像です。

異物摘出後のレントゲン画像
異物摘出によって胃の中が空になったことがわかります。

今回の症例では異物が胃内に存在していたため、内視鏡による低侵襲な治療が可能でした。
しかしこの石が胃から小腸へ移動していた場合は状況が大きく変わっていた可能性があります。
犬の散歩中の拾い食いや家庭内の環境整備には十分注意することが大切です。

まとめ

いかがでしたか?
犬の異物誤飲は非常に身近なトラブルですが、発見や治療が遅れると命に関わることがあります。

胃の中に異物が存在している段階で診断できれば、今回の症例のように内視鏡で安全に摘出できる可能性があります。
しかし小腸へ移動してしまうと、より大掛かりな外科手術が必要になることも少なくありません。

誤飲が疑われる場合は症状の有無にかかわらず、早めに動物病院へ相談することが大切です。
当院では内視鏡検査および内視鏡による異物摘出に対応しております。
「何かを飲み込んだかもしれない」
「誤飲したけれど様子を見ていて大丈夫か分からない」
このような場合は自己判断せず、お早めに当院までご相談ください。

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