2026/6/10
皮膚/耳科
何度も繰り返すアメリカンコッカースパニエルの外耳炎外耳炎の手術について解説
「犬が耳をよく掻いている」
「犬の耳から嫌な臭いがする」
これらの症状は、外耳炎のサインかもしれません。
外耳炎は、犬に最もよくある病気のひとつです。
多くの場合は耳洗浄や点耳薬による治療で改善しますが、中には何度も外耳炎を繰り返し、徐々に耳の状態が悪化してしまうケースもあります。
進行した外耳炎では、内科治療だけでは管理できなくなり、外科手術が必要になることも少なくありません。
今回は、犬の外耳炎の原因や、外耳炎に対する外科治療について、実際の症例をまじえてご紹介します。
愛犬の外耳炎にお悩みの飼い主様はぜひお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
犬の外耳炎とは
外耳炎とは、耳の入口から鼓膜までの道(外耳道)に炎症が生じる病気です。
外耳炎の症状としては、
- 耳が赤く腫れる
- 犬が耳を痒がる
- 耳垢が増加する
- 耳が臭くなる
といった症状が特徴的です。
外耳炎の原因
外耳炎の原因は、
- 細菌やマラセチアの感染
- 耳ダニの感染
- 異物の混入
- アレルギーやアトピー性皮膚炎
などがあります。
原因はどれかひとつではなく、複数重なっていることもあります。
外耳炎が悪化しやすい犬種
特定の犬種では、外耳炎が悪化しやすいことが知られています。
外耳炎が悪化しやすい犬種としては、
- アメリカンコッカースパニエル
- ラブラドールレトリバー
- シーズー
などが挙げられます。
これらの犬種は、脂漏体質や垂れ耳などの特徴から、耳が蒸れやすく、外耳炎が悪化しやすいため注意が必要です。
犬の外耳炎の治療
外耳炎に対する治療には、内科治療と外科治療があります。
最初に行われるのは、耳の洗浄や点耳薬などによる内科治療が一般的です。
ただし、内科治療で十分に管理できない場合は、外科手術が選択されることもあります。
初期に行う内科治療
犬の外耳炎に対し、最初に行われるのは耳洗浄や点耳薬による治療が一般的です。
耳洗浄で耳垢や分泌物を除去した後、抗生物質や抗炎症薬などが配合された点耳薬を投与し、炎症の改善を目指します。
しかし、耳はデリケートな部位のため、耳の処置をいやがる犬も少なくありません。
犬の性格や耳の状態によっては、抗生物質や抗炎症薬の内服が行われることもあります。
外耳炎の原因として、アレルギーや脂漏症などの基礎疾患がある場合には、あわせて治療することが重要です。
基礎疾患を適切にコントロールすることが再発防止につながります。
外科手術が必要になるサイン
慢性化した外耳炎(慢性外耳炎)では、外科手術が検討される場合があります。
以下のような症状がみられる場合は外科手術が必要なサインかもしれません。
- 何年も外耳炎を繰り返している
- 治療しても外耳炎がすぐ再発する
- 耳を触ると痛がる
慢性外耳炎が進行すると、最終的には軟骨が石灰化・骨化を起こし、耳の構造の変化が起きてしまうことも少なくありません。
重度に進行した外耳炎は、内科治療では十分な管理が難しくなり、犬の痛みや不快感を改善するために外科手術が選択されることがあります。
実際に手術が必要かどうかは、耳道の状態や症状の程度、これまでの治療経過などを総合的に評価して判断されます。
全耳道切除術について
犬の外耳炎に対して行われる外科手術として代表的な手術は「全耳道切除術」です。
全耳道切除術とは、慢性的な炎症によって不可逆的な構造変化を起こした耳道を切除する手術です。
外科手術と聞くと、不安に思われる飼い主様も多いかもしれません。
しかし、外科手術の大きな目的は、犬の痛みや不快感を取り除くことです。
耳道の狭窄や骨化が進行した症例では、無理に内科治療を続けるよりも外科手術によって根本的な改善を目指すほうが、犬にとって良い結果につながることがあります。
手術には一定のリスクも伴うため、手術によるリスクと期待できる効果について十分に理解し、獣医師とよく相談しながら治療方針を決定することが大切です。
実際の症例紹介
今回紹介する症例は、13歳6ヶ月のアメリカンコッカースパニエルです。
本症例は、数年前から外耳炎を繰り返していた症例で、当院には約1年前から通院していました。
月に1回、病院での耳洗浄と長時間作用型の点耳薬による治療を継続していましたが、十分な改善が得られませんでした。
そこで、耳垢の細菌培養検査を実施し、検査結果に基づいて点耳薬の種類を変更しました。
しかし、その後も炎症のコントロールは難しく、何度も症状がぶり返していました。
耳の状態は、耳道の狭窄が認められ、耳道内には多量の膿や浸出液が貯留していました。
さらに、長期間の炎症によって耳道壁が厚く硬化し、耳道の構造変化が生じており、今後も内科治療では犬の不快感や痛みのコントロールが難しいと考えられました。
飼い主様と相談のうえ、本症例では外科手術が実施されることになりました。
以下が、手術前の写真です。

治療と手術の経過
本症例では、痛みや不快感の改善を目的として、左耳の全耳道切除術が実施されました。
手術では病的に変化した耳道を完全に摘出し、慢性的な炎症や感染の原因となっていた組織を除去しました。
摘出した耳道は病理組織検査に提出し、慢性炎症に伴う増殖性変化が確認されました。
以下は手術中と手術終了後の写真です。


術後の経過は良好で、これまで頻繁にみられていた耳を気にする様子や頭を振る行動は減少しました。
今後は経過観察を行いながら、軽度の外耳炎が認められる右耳については内科治療による管理を継続していく予定です。
まとめ
いかがでしたか?
犬の外耳炎は、特定の犬種や体質等により慢性化し、内科治療では症状のコントロールが困難になるケースがあります。
重度に進行した外耳炎では、全耳道切除術などの外科治療によって、犬の痛みや不快感の改善が期待できることがあります。
犬が外耳炎を長年繰り返している場合は、動物病院でよく相談し、愛犬の苦痛を和らげるために最適な治療を選択することが大切です。
当院では、犬の外耳炎の内科治療から全耳道切除術などの外科治療まで幅広く対応しています。
愛犬の耳のトラブルでお困りの際は、お気軽にご相談ください。