症例紹介

Case

2026/5/21

小児科

スコティッシュフォールドの難産の一例猫の帝王切開とは?

「猫は安産と聞いていたのに、なかなか出産が終わらない」
「何匹か産まれたけど、途中で止まってしまった」
「陣痛が来ている様子がないけど大丈夫?」

このような不安を感じたことがある飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。
猫は一般的に安産な動物とされていますが、まれに難産となり、緊急の対応が必要になることがあります。
とくに胎子が母体内に残ってしまうと、母猫の体に大きな影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。

今回は猫の帝王切開について、一般的な知識とあわせて、実際の症例をもとにわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、いざという時の判断にお役立てください。

猫の出産と難産について

猫の妊娠期間は一般的に約63日前後とされており、多くの場合は自然に問題なく出産が進みます。
猫は1回の出産で複数の子猫を産むことが多く、比較的スムーズに分娩が進むのが特徴です。

しかし、以下のような場合には難産となることがあります。

  • 胎子のサイズが大きい
  • 胎子の位置や姿勢に異常がある
  • 母猫の陣痛が弱い(子宮収縮不全)
  • 出産の途中で分娩が停止する

難産は決して多くはありませんが、「猫は安産だから大丈夫」と思い込んでしまうと、対応が遅れてしまうことがあります。
もしものときに落ち着いて対応できるよう、出産が近づいたらあらかじめかかりつけの動物病院に相談しておくと安心です。

猫の帝王切開とは

帝王切開とは、外科手術によって母猫の子宮から胎子を取り出す方法です。
自然分娩が困難、または母体や胎子に危険が及ぶと判断された場合に実施されます。

帝王切開が検討される主なケースは以下の通りです。

  • 長時間経っても胎児が出てこない
  • 陣痛が弱く、分娩が進まない
  • 胎児の心拍が低下している
  • 母猫の体調が悪化している

適切なタイミングで実施することで、母猫・子猫ともに救命できる可能性が高まります。

難産が疑われるときの具体的なサイン

難産は見た目だけでは判断が難しいこともありますが、以下のようなサインがひとつの目安になります。

なかなか次の子が産まれない

通常は数十分〜数時間で次の子が産まれてきます。
しかし、半日近く間が空いてしまう場合は、出産が止まっている可能性があります。

あらかじめレントゲン検査や超音波検査で胎子数を把握しておくと、「あと何匹いるはずか」が分かるため、出産が正常に進んでいるかの判断がしやすくなります。

いきみ(陣痛)が弱い・止まってしまった

出産時にはお腹に力を入れる様子が見られますが、それが弱かったり途中でなくなった場合は、うまく産めていない可能性があります。

このような場合は、無理に様子を見続けるのではなく、一度動物病院へ相談することが大切です。
子宮の収縮を助ける処置や、必要に応じて帝王切開などの対応が検討されます。

まだお腹に子猫がいるかもしれない

すでに何匹か産まれていても、すべて産み終わっているとは限りません。

事前に胎子数を確認していない場合、「出産が終わったのか」「まだ残っているのか」の判断が難しくなります。
一方で胎子数を把握していれば、残っている可能性に早く気づくことができ、迅速な対応につながります。

もし「お腹が張っている」「まだ子猫がいそう」と感じた場合や、出産が途中で止まっている様子があれば、早めに動物病院を受診しましょう。
子猫が長時間お腹の中に残ると、母猫の体に負担がかかり、体調を崩す原因になります。
あらかじめ、レントゲン検査や超音波検査で胎子の有無を確認しておきましょう。

猫の難産に対して帝王切開を実施した実際の症例

ここでは、当院で実際に難産に対して帝王切開を実施した症例をご紹介します。

症例は1歳3ヶ月のスコティッシュフォールドの雌猫です。
4匹中3匹はすでに出産したものの、「残りの1匹が出てこない」とのことで来院されました。
出産から約10時間が経過していましたが、いきみ(陣痛)の様子は見られませんでした。

レントゲン検査および超音波検査を行ったところ、子宮内に胎子が残っていて生存していることを確認しました。

レントゲン検査の胎子 レントゲン検査の胎子

超音波検査の胎子

以上の検査結果から、分娩が途中で停止した難産と診断しました。
まずは子宮収縮を促すため、オキシトシン製剤を複数回投与しましたが、分娩の進行は認められませんでした。

このままでは母猫および胎子への負担が大きくなると判断し、帝王切開を実施しました。

胎子を含んだ子宮

胎子が入っているため、大きく膨らんだ子宮の写真です。
このまま分娩が進まず胎子が子宮内に残った状態が続くと、母猫の体に大きな負担がかかってしまう可能性があります。

手術により胎子を無事に摘出することができました。
術後の経過は良好で、母猫の体調も安定していました。

生まれてきた子猫 子猫の世話をする母猫

現在は出産から2ヶ月が経過していますが、母猫・子猫ともに元気に過ごしています。

生まれてきた子猫たち 生まれてきた子猫たち

まとめ

猫は比較的安産な動物ですが、今回の症例のように難産となるケースもあります。

とくに、「出産途中で止まってしまう」「胎子が母体内に残る」といった状況は、母猫の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、事前に胎子数を把握しておくことで、出産異常に早く気づくことができます。

「いつもと違う」「出産が長引いている」と感じた場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。
気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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