症例紹介

Case

2026/5/11

泌尿器/生殖器科

トイプードルの子宮蓄膿症の一例実際の症例をもとに子宮蓄膿症の概要と治療について解説

子宮蓄膿症という病気をご存知でしょうか。
もし愛犬が未避妊メスであれば、気を付けておきたい病気です。
「水をたくさん飲んでたくさん尿をしている」
「陰部から膿が出ている」
「急に食欲がなくなり、ぐったりしている」
このような症状が出ている場合、子宮蓄膿症にかかっている可能性があります。

今回は、当院で治療を行った実際の症例をもとに、子宮蓄膿症の概要と治療について説明していきます。
ぜひこの記事を最後まで読んで、子宮蓄膿症への理解を深めていただけたら幸いです。

犬の子宮蓄膿症とは?

子宮蓄膿症は、その名の通り子宮に膿が溜まってしまう病気です。
直接の原因は、膣から入り込んだ細菌が子宮の中で増えてしまうことです。
しかし、もっと根本的な原因は、発情に関連するホルモンの影響で、子宮が感染を起こしやすくなるためだと考えられています。

子宮蓄膿症は、中高齢で、お産を経験していない犬や、長い間お産をしていない犬によく見られます。
タイミングとしては、発情後数か月以内に起こりやすいことが特徴です。

子宮蓄膿症の症状

子宮蓄膿症になると、以下のような症状がみられることがあります。

  • 多飲多尿
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 陰部からの排膿
  • 腹部膨満

これらの症状のうち、「陰部からの排膿」はとても特徴的で、飼い主様も異常に気づきやすいかもしれません。
ただし、子宮の管が閉鎖してしまっていて、膿が身体の外に出てこないこともあるので注意が必要です。
愛犬に異変を感じたら、できるだけ早く動物病院を受診して獣医師の診察を受けるようにしましょう。

子宮蓄膿症の治療

子宮蓄膿症の基本的な治療は、外科手術によって子宮と卵巣を摘出することです。
症状が軽い場合や特別な事情がある場合は、抗生剤やホルモン治療などによる内科治療が選ばれることもあります。
ただし、再発する可能性が高い病気のため、通常は勧められません。

子宮蓄膿症は、早期発見できれば手術で完治できる病気です。
一方で、症状が進行してしまうと命に関わることもあります。
命に関わる危険なケースとは、細菌の毒素が全身に広がってショックを起こしたり、子宮が破れてお腹の中に膿が漏れ出して腹膜炎を起こしたりしている場合です。

進行した場合のリスクが大きいため、子宮蓄膿症だと分かったら、全身状態をチェックしたうえで、できるだけ早く手術を行うことが一般的です。

犬の子宮蓄膿症は予防できる?

子宮蓄膿症は、健康なうちに避妊手術を受け、子宮と卵巣を摘出することで予防できます。
子宮蓄膿症の治療として行う手術も、子宮と卵巣の摘出ですが、犬の身体への負担は大きく異なります。
手術や麻酔のリスクをゼロにすることはできませんが、若くて健康なときに手術を行ったほうがリスクは低くなるでしょう。

実際の症例紹介

今回紹介するのは、10歳の未避妊メスのトイプードルの症例です。
2日前から元気・食欲がないという主訴で来院されました。
当院で腹部エコー検査を実施したところ、子宮角(妊娠したときに赤ちゃんが育つ場所)が大きく拡張し、内部に大量の液体が貯留していることが分かりました。
血液検査や身体検査など、その他の検査での所見もふまえ、子宮蓄膿症が強く疑われました。

次の画像は、エコー検査の画像です。

エコーで確認された拡張した子宮角

大きく拡張した子宮角の中に、ドロドロの液体が貯留していることが分かります。

治療と手術の経過

この症例では、陰部からの排膿は認められませんでした。
膿は外に排泄されることなく溜まり続けており、子宮が破裂してしまう危険もある状況でした。
一方で、全身状態は安定していて、手術の実施は可能と判断されたため、緊急で手術を行うことになりました。

行ったのは、子宮と卵巣を摘出する手術です。
術後は点滴と抗生剤の投与を行い、全身に広がってしまった細菌や毒素を取り除く処置を続けました。

以下が手術中の写真と、取り除いた子宮の写真です。

手術時に確認した拡張した子宮

摘出した子宮

子宮角は本来、左右対称の大きさをしています。
反対側の子宮角に比べると、膿が溜まっている子宮角が非常に大きく拡張していることが分かりますね。

術後の経過は良好で、数日で食欲も戻り、元気に退院して行かれました。
切除した子宮の病理診断の結果は、慢性化膿性子宮内膜炎および子宮炎でした。

まとめ

犬の子宮蓄膿症は、中高齢の未避妊メスには比較的よくある病気です。
初期に発見できれば手術で完治できますが、治療が遅れると命に関わる危険もあるため注意が必要です。
幸い、今回の症例では、腹膜炎やショックを起こす前に治療できたため、無事に元気な姿で退院することができました。

避妊していない犬で陰部から膿が出ていたり、体調に変化がみられた場合は、子宮蓄膿症の可能性があります。
異変に気づいたら、できるだけ早く動物病院を受診してください。

子宮蓄膿症は、避妊手術によって未然に防げる病気であることも大きな特徴です。
避妊手術について不安な点・不明点などがある場合も、お気軽に当院までご相談ください。

診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です

pagetop
loading