症例紹介

Case

2026/4/18

腫瘍科

アメリカン・コッカ―スパニエルの脾臓腫瘤を摘出した1例犬の脾臓腫瘤について

犬の「脾臓(ひぞう)にしこりが見つかった」と言われると、多くの飼い主様は「がんではないか」と強い不安を感じるのではないでしょうか。
脾臓にできるしこり(腫瘤)は、破裂して腹腔内出血を起こすまで症状として現れないことが非常に多く、健康診断のエコー検査で偶然見つかることも少なくありません。
脾臓の腫瘤全てが悪性というわけではなく、加齢に伴う良性の変化である結節性過形成というケースも多く存在します。

今回は、脾臓の結節性過形成の一般的な特徴と共に、当院の健康診断で脾臓に腫瘤が見つかり、脾臓を摘出した症例をご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬に脾臓の腫瘍が見つかったときの判断材料にしていただけると幸いです。

そもそも脾臓とは?

脾臓はお腹の左側に位置する血液の貯蔵庫とも呼ばれる臓器です。
脾臓の主な役割は、

  • 古くなった赤血球の処理
  • 緊急時に備えた血液の蓄積
  • 病気と戦う免疫機能の維持

です。
脾臓は非常に血管が豊富な臓器のため、ここに発生する腫瘤は破裂による大出血のリスクを抱えています。

犬の脾臓にできる腫瘤って何があるの?

犬の脾臓にできる、脾臓由来の腫瘤の種類について解説します。
脾臓で見つかる腫瘤は、大きく分けて以下のような良性腫瘍と悪性腫瘍があります。

良性腫瘍

良性腫瘍には

  • 結節性過形成
  • 脾血腫
  • 血管腫

などが挙げられます。

良性腫瘍は周囲の組織を破壊したり、他臓器へ転移したりする心配はありません。
摘出すれば根治が期待できるものが多く、手術後の寿命や生活の質に大きな影響を与えないことがほとんどです。

悪性腫瘍

悪性腫瘍には

  • 血管肉腫
  • リンパ腫
  • 組織球性肉腫

などが挙げられます。

悪性腫瘍は、増殖のスピードが非常に早く、肝臓や肺などの他臓器へ転移しやすいという特徴があります。
早期に発見して処置を行わなければ、短期間で命に関わる状態に進行するリスクが高い病気です。

犬の脾臓の結節性過形成とは

犬の脾臓の結節性過形成は、脾臓の正常な組織が腫瘤になってしまう良性の病変で、高齢犬に非常に多くみられます。
これは腫瘍ではなく、加齢性変化と考えられています。
発育の特徴は以下の通りです。

  • 塊状または多発する結節(数mmから数cmの腫瘤ができる)
  • 非浸潤性(周囲の組織を壊したり、転移したりしない)

結節性過形成は良性ではありますが、巨大化すると脆くなり、破裂して出血の原因となることがあります。
超音波検査で、結節性過形成と初期の悪性腫瘍を完全に見分けることは、専門医であっても困難です。
そのため、腫瘤が見つかった場合には、その後の成長速度や形状の変化を慎重に追う必要があります。

犬の脾臓の結節性過形成の症状

犬の脾臓の結節性過形成は、ほとんどの場合で無症状です。
健康診断のエコー検査などで偶然発見される偶発腫瘍の代表格ですね。
ただし、腫瘤が非常に大きくなった場合や、まれに破裂した場合には以下のような症状が出ることがあります。

  • 元気消失
  • 粘膜の蒼白(貧血)
  • 腹部膨満
  • 急性虚脱(破裂時)

多くの場合、無症状のまま経過しますが、悪性腫瘍との区別が難しいという点が最大の懸念事項となります。
無症状のうちに性質を推測するためには、定期的な画像検査が不可欠です。

犬の脾臓の結節性過形成の治療

犬の脾臓の結節性過形成の治療において、確定診断と根治を兼ねた第一選択は外科手術(脾臓摘出術)です。
良性病変であるため、脾臓を摘出してしまえば再発や転移の心配はなく、予後は極めて良好です。

腫瘤が小さく、増大傾向が見られない場合は、数ヶ月おきのエコー検査による経過観察が選択されることもあります。
しかし、観察中に破裂するリスクや、実は悪性腫瘍であったという見落としのリスクをゼロにすることはできません。
特に大型犬や、しこりが2〜3cmを超えてくるような場合は、安全のために予防的な摘出が推奨されることが多いです。

脾臓腫瘤の摘出を行った1例

今回は脾臓腫瘤を摘出した症例をご紹介します。
なお、症状の現れ方や治療反応には個体差があることにご注意ください。

紹介する症例は、5歳で去勢雄のアメリカンコッカースパニエルです。
腰の痛みで当院を受診し、エコー検査を行ったところ、偶発的に脾臓に2つの腫瘤が見つかりました。
こちらが脾臓の腫瘤のエコー画像です。

脾臓の結節性過形成のエコー画像

脾臓を摘出し、病理検査に出しました。
病理検査の結果は結節性過形成で、良性の腫瘍でした。

結節性過形成の脾臓

脾臓を摘出後の経過も良好で、安定した生活を送っています。

今回のケースでは大出血する前に摘出でき、悪性ではないことも診断できたことになりますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
犬の脾臓腫瘤は、良性のものもあれば悪性のものもあります。
定期的な健康診断をすることで、悪性腫瘍も含めて早期発見・早期治療することができます。
症状が出て苦しむ前に対処し、愛犬の健康寿命を延ばせるようにしましょう。

当院では、腫瘍科の診療を専門的に行っており、外科手術の実績も多くあります。
手術に悩んでいたり、腫瘍について分からないことがあれば、お気軽にご相談ください。

診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です

pagetop
loading