2026/4/4
腫瘍科
Mix犬の大細胞性リンパ腫の1例犬の消化器型リンパ腫について
愛犬に食欲がなく、元気がない状態が続くと心配ですよね。
一般的な胃腸炎の薬を使用しても、なかなか症状が落ち着かずに長引く場合は、リンパ腫が関係している可能性があります。
この記事では、犬のリンパ腫についての解説と、実際に当院で手術をしたリンパ腫の犬の症例を合わせて紹介いたします。
ぜひこの記事を最後までお読みいただき、リンパ腫と診断された際の備えにしてください。
犬のリンパ腫とは
リンパ腫とは、血液の腫瘍の一つで、リンパ球が異常に増殖してしまう病気です。
犬のリンパ腫の本質的な原因は不明ですが、除草剤や強力な磁場の影響、都市部に住む犬で多いことなどが報告されています。
犬のリンパ腫は発生部位によって以下の4つに分類されます。
- 多中心型(体表にあるリンパ節に発生する)
- 縦隔型(胸の中や胸のリンパ節に発生する)
- 消化器型(胃腸管に発生する)
- その他(鼻腔内や皮膚などの上記以外の部位に発生する)
今回紹介する消化器型のリンパ腫は、胃腸管に発生するリンパ腫です。
発生部位は、小腸、胃、結腸の順に多く、犬では中高齢でよく見られます。
犬の消化管にできる腫瘍の中では、最も発生頻度が高い腫瘍の一つです。
犬のリンパ腫の症状
犬のリンパ腫の主な症状は、慢性的な消化器症状です。
具体的には、
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 体重減少
などがあげられます。
腫瘍が大きくなった際には、血便やしぶりなどがみられる場合もあります。
対症療法で良くならない場合には、リンパ腫が隠れていることもあるため、腫瘍に詳しい動物病院で一度相談してみましょう。
犬のリンパ腫の診断
犬の消化器型リンパ腫の診断は以下の方法を組み合わせて行います。
- 超音波検査
- 血液検査
- 細胞診
- 内視鏡検査
- 病理検査
確定診断をつけるためには、基本的に病理検査が必要です。
犬の消化器症状が対症療法でおさまらない場合、超音波で腹部にエコーをあてて、腫瘍が隠れていないか探すことが大切です。
腫瘍があった場合には、細胞診を行い、病理検査に出します。
超音波で腫瘍や腫脹している箇所が見つからない場合は、内視鏡をおこない、胃腸の粘膜を採取して病理検査をする必要があります。
消化器症状が長引く場合には、動物病院で一度検査をしてもらいましょう。
犬の消化器型リンパ腫の治療
犬の消化器型リンパ腫の治療は、リンパ腫の型によって異なります。
犬の消化器型リンパ腫は、細胞の大きさによって、小細胞性と大細胞性の2つに分けられます。
今回紹介する症例のような大細胞性リンパ腫は、主に以下の薬剤を組み合わせて治療します。
- プレドニゾロン
- Lーアスパラギナーゼ
- ロムスチン
- ニムスチン
腫瘍が成長して、腸閉塞や腸穿孔を起こしてしまった場合は、内科治療に加えて外科手術で腫瘍を摘出することが必要です。
上記のような抗がん剤の副作用には、骨髄毒性やアナフィラキシーなどの重篤なものもあります。
治療をはじめてからも定期的に動物病院で検査を行い、愛犬の身体に異常がないかチェックすることが大切です。
Mix犬の大細胞性リンパ腫の症例
実際に当院で治療した、Mix犬の大細胞性リンパ腫の症例について紹介します。
なお、症状の現れ方や治療に対する反応には個体差があることにご注意ください。
13歳で去勢済みのMix犬が、元気と食欲の低下を主訴に来院しました。
血液検査を行ったところ、炎症の数値の上昇と、血中の主なたんぱく質であるアルブミンの低下が認められました。
超音波検査では、腸壁の不整と腹水の貯留が確認できました。
以下が、超音波検査で確認できた腸管の不整部位の画像です。

腫瘍の周囲で腸壁の5層構造が乱れてみえます。
以下が開腹後に確認できた腹水の画像です。

低アルブミンや腫瘍は腹水の原因となることが多いです。
この症例では腸の一部に腫瘤があり、腸穿孔を起こしていたため、外科手術にて腫瘍を切除しました。
以下が、開腹後に確認できた腫瘍の画像です。

病理検査の結果は、高悪性度の大細胞性リンパ腫でした。
現在は2週間に1度のLーアスパラギナーゼの注射を行っており、元気と食欲は回復しています。
まとめ
犬の消化管型リンパ腫は血液の悪性腫瘍で、消化器症状がみられます。
初期症状は胃腸炎の症状と変わらないため、対症療法を行っている最中に進行してしまう可能性もあります。
胃腸炎が長引くと感じたり、体重の減少が止まらない場合には、早めに動物病院で診てもらうことが重要です。
当院では腫瘍科の専門医が在籍しており、内科治療から外科治療まで一貫して診察することが可能です。
腫瘍のことでご心配な点や分からないことがあれば、お気軽にご相談ください。