2026/3/21
腫瘍科
トイプードルの肝細胞癌を摘出した1例犬の肝細胞癌について
犬の健康診断で「肝臓に腫瘤がみつかった」といわれると、多くの飼い主様は不安に思うのではないでしょうか。
肝臓にできる腫瘍は、進行しなければ症状として出てこない場合も多くあります。
健康診断でエコーをした際に、偶然肝臓に腫瘤がみつかることも少なくありません。
今回は、肝細胞癌の一般的な特徴と共に、当院の健康診断で肝細胞癌が見つかり、肝臓の一部を摘出した症例をご紹介します。
愛犬の健康を守るために、犬の肝細胞癌についての知識を深めていきましょう。
犬の肝臓にできる腫瘤って何があるの?
犬の肝臓にできる、肝臓由来の腫瘤の種類について解説します。
肝臓で見つかる腫瘤は、大きく分けて「肝臓そのものから発生する腫瘤(肝原発性)」と「ほかの臓器にある腫瘤から転移してきたもの(転移性)」の二つに分類されます。
肝原発性の腫瘤については以下のようなものがあります。
良性腫瘍
- 肝細胞腺腫
- 結節性過形成
悪性腫瘍
- 肝細胞癌
- 胆管癌
- 血管肉腫
肝細胞癌でも、予後が良好となるケースは、手術で患部が取り切れていた場合です。
肝臓の腫瘍は、初期ではあまり症状が出ない場合も多いので、動物病院で定期的に健康診断をすることが大切です。
犬の肝細胞癌とは
犬の肝細胞癌は肝臓の細胞から発生する悪性腫瘍で、高齢犬に多くみられます。
発育のパターンは主に以下の3つに分類されます。
- 塊状型(単一のしこりができる)
- 結節型(複数のしこりができる)
- びまん型(肝臓全体に広がってできる)
この中でも塊状型は転移率が低く、外科手術で摘出することで、良好な予後が期待できます。
犬の肝細胞癌において、半数以上は塊状型といわれています。
結節型とびまん型の犬の肝細胞癌は、基本的に外科手術で取りきることが難しく、効果的な化学療法もないため、予後不良といわれています。
犬の肝細胞癌の症状
犬の肝細胞癌の症状は初期ではほとんど見られません。
肝細胞癌が大きく成長することで、以下のような症状が見られることがあります。
- 食欲低下
- 元気消失
- 嘔吐
- 体重減少
- 腹部膨満
肝細胞癌は、ステージが進行しなければ症状が出ません。
無症状のうちに発見するためには、動物病院で定期的に健康診断を受けることが非常に重要です。
犬の肝細胞癌の診断
犬の肝臓に腫瘤が見つかったあとの、診断の流れについて解説します。
犬の肝臓の腫瘤の診断には、以下の検査を組み合わせて行うことが必要です。
- 腹部エコー検査
- 細胞診
- 血液検査
- CT検査
- 病理検査
腹部エコーで肝臓に腫瘤を見つけた場合、まずは細胞診からおこないます。
肝臓にできる腫瘤には、細胞診で診断できるものもあります。
細胞診をしても、腫瘤の種類が分からない場合は、CT検査を行い、患部を摘出するための手術計画を立てることが必要です。
手術によって病変部位を摘出したら、摘出した肝臓を病理の専門家に診てもらうことで、診断をつけることができます。
犬の肝細胞癌では、肝酵素のなかでもALPの上昇が著しいことが多いです。
血液検査も、診断をつけるうえで重要な情報のひとつとなります。
犬の肝細胞癌は、細胞診で診断をつけることが難しい場合が多いです。
犬の肝細胞癌の診断には、基本的に病変部位を摘出して、病理検査に出すことが必要となります。
犬の肝細胞癌の治療
犬の肝細胞癌の治療の第一選択は外科手術です。
単発で発生している塊状型の場合は、肝臓の患部を切除することによって根治が期待できる場合があります。
適切に患部が取り切れていた場合は、転移をする可能性も低いです。
びまん型と結節型の場合は、患部を取りきることが難しいため、対症療法となることが多いです。
一般的には予後不良といわれており、効果的な化学療法の報告もありません。
肝細胞癌の摘出を行なった1例
今回紹介する症例は、16歳で去勢雄のトイプードルです。
定期的な健康診断のなかで、エコー検査を行ったところ、肝臓に4㎝の腫瘤が見つかりました。
こちらが肝臓の腫瘤の画像です。

肝臓の腫瘤ができていた部分を摘出し、病理検査に出しました。
病理検査の結果は肝細胞癌で、今回の切除で取り切れているとのことでした。
こちらが切除した肝細胞癌の画像です。

腫瘤を取り切って4か月後の今も、再発や転移は確認されていません。
現在は元気と食欲もあり、安定した生活を送っています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
犬の肝細胞癌では、腫瘍が大きくならない限り、症状を示さないことも多いです。
定期的に健康診断を行うことで、悪性の腫瘍も早期に発見することができます。
症状がでて苦しむ前に対処することで、愛犬の健康寿命を大きく伸ばすことができます。
当院では、腫瘍科の診療を専門的に行っており、外科手術の実績も多くあります。
手術に悩んでいたり、腫瘍について分からないことがあれば、お気軽にご相談ください。