症例紹介

Case

2026/3/10

血液内科

当院で行う犬の輸血について

犬でも重度の貧血や大量出血などのときに輸血が必要になることがあります。
輸血は失われた血液成分を補い、命を守るための重要な治療です。
動物医療には人医療のような血液バンクがないため、輸血には供血犬(ドナー)が必要です。

この記事では、犬の輸血の基本と当院で行っている輸血について紹介します。
この記事を読んで輸血について知っていただき、供血犬登録にご興味を持っていただけましたら、当院までお気軽にご相談ください。

犬の輸血とは

輸血は赤血球などの血液成分を他の犬から一時的に供給する治療です。
血液には

  • 酸素の運搬
  • 止血
  • 体の恒常性維持

といった働きがあり、血液成分を補う輸血は重要な救命処置になります。
輸血は交通事故による大量出血や腫瘍などによる重度の貧血などの場合に行われ、血液が不足した状態の犬の全身機能を維持するために行われる重要な治療です。

輸血前に行う試験について

輸血を安全に行うためには、事前に血液型検査とクロスマッチ試験を行い血液が適合するかを調べる必要があります。
適合しない血液を輸血してしまうと重篤な免疫反応が起こるため重要な試験です。

血液型検査

血液型検査では、供血犬とレシピエントの血液型を判定し、適合するかを検査します。
血液型の判定には犬血液型判定キットが使用され、検査精度を上げるために自己凝集反応試験も事前に行います。

犬の血液型で重要なのはDEA1.1です。
DEA1.1には陽性と陰性があり、DEA1.1陰性の血液型は、多くの犬に輸血できます。

クロスマッチ試験(交差適合試験)

クロスマッチ試験では供血犬とレシピエントの血液を混合し、凝集や溶血などの反応が起こらないかを確認する試験です。
これには主試験と副試験があり、両方で凝集や溶血が起こらないことを確認します。

安全に輸血を行うためには、血液が適合しているかを確認することが重要です。

輸血反応について

犬の輸血では輸血反応と呼ばれる副反応が起こることがあります。

代表的な症状には、

  • 発熱
  • 嘔吐
  • 元気消失

などが挙げられ、重症例ではショック状態となり死亡することもあります。

そのため、輸血中には体温や心拍数などのバイタルチェックを行い、もし輸血反応を疑う症状が認められた場合には輸血を中止し適切な治療が必要です。

当院で行っている輸血について

当院では安全に輸血が実施できるような体制を整えています。
実際に、これまでにも多くの子が輸血によって命を救われています。
供血犬としてご協力いただいている子と飼い主様に、改めて感謝申し上げます。

供血犬について

輸血では血液が適合性の他に、供血犬の健康状態や採血に耐えられるかどうかも重要です。
供血犬とは輸血用の血液を提供する犬のことで、供血犬になる条件は施設によって多少異なります。

当院では

  • 7歳未満
  • 20kg以上
  • 大型犬

といった基準を満たし、その子の性格や健康状態を考慮して飼い主様にドナー登録をお願いしております。
その中で飼い主様のご了承が得られた子に、供血犬としてご協力いただいています。

供血から採血まで

重度の貧血や腫瘍等の疾患によって輸血が必要となった場合に、供血犬として登録されている子に来ていただきます。

まず、供血犬の身体検査及び血液検査を行い体調に問題がないかを確認します。
血液型の判定には写真のような専用のキットが使われ、自己凝集判定用と血液型判定用の両方で凝集が認められなければDEA1.1陰性です。

犬血液型判定キット

血液型の適合が確認できたらレシピエントの血液とのクロスマッチ試験(適合試験)を行い、両方の検査で適合が確認できたら採血が行われます。

クロスマッチ試験主反応の赤血球

クロスマッチ試験の主試験を行った後の赤血球です。
画像のようにそれぞれの赤血球がバラバラになっていると、クロスマッチ試験の主試験は問題なしとなります。

採血から輸血まで

採血は、覚醒下で犬を保定をしながら行います。

輸血の採血の様子

血液は時間が経つと固まってしまうため専用のバッグが必要です。
撹拌しながら輸血用のバッグに血液を入れ、必要量をレシピエントに輸血します。

輸血パックの重さを測定している様子

輸血バッグに入れられた血液です。
必要量を正確に輸血するために重さを測定します。

輸血時には心拍数や血圧などのバイタルチェックが必要です。
モニターに注意しながら必要量の輸血を行います。

まとめ

今回は犬の輸血の基本と当院で行っている犬の輸血について紹介しました。
輸血は命を守るために重要な治療であると同時に、輸血反応のリスクがある治療です。
安全に行うためには適合検査や採血を行える経験を持った獣医師や、供血犬とその飼い主様のご協力が必要不可欠になります。

当院では供血犬と飼い主様のご協力のもと、安全に十分配慮しながら輸血が行える体制を整えています。
輸血について気になることがあれば、お気軽に当院までお問い合わせください。
また、供血犬になっていただける子とその飼い主様も探しております。
もし、ご興味がありましたら当院スタッフまでお気軽にお声がけください。

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