2026/3/6
消化器科
ミニチュアシュナウザーの胆嚢粘液嚢腫の一例緊急手術で胆嚢摘出を実施
胆嚢粘液嚢腫という病気をご存知でしょうか。
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢の中で胆汁がゼリーのような粘液になってしまう病気です。
「動物病院で胆嚢粘液嚢腫で手術が必要といわれたが、どんな病気かいまいちわからず不安。」
「愛犬の胆嚢の治療で薬を飲ませているが、最近体調が優れないようで心配。」
このような悩みをお持ちの飼い主様も多いのではないでしょうか。
今回は犬の胆嚢粘液嚢腫について実際の症例を紹介しながら解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の胆嚢粘液嚢腫についての知識を深めていただければ幸いです。
目次
犬の胆嚢粘液嚢嚢腫とは
胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢に貯蔵された胆汁が何らかの原因でドロドロの粘り気のある状態になってしまう病気です。
胆嚢は肝臓で作られた胆汁という消化酵素を貯蔵している臓器です。
胆汁は通常はサラサラの液体です。
肝臓で作られた胆汁は肝管を通って胆嚢に貯蔵され、消化のために必要になったら総胆管を通って十二指腸に分泌されます。
胆嚢粘液嚢腫で胆汁がドロドロになると胆嚢からうまく排出されなくなってしまい、さまざまな症状を引き起こします。
ここからは犬の胆嚢粘液嚢腫についてさらに詳しく解説していきます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の症状
犬の胆嚢粘液嚢腫の症状は
- 食欲不振
- 元気消失
- 下痢
- 嘔吐
- 黄疸
などです。
ただ食欲や元気がないだけでなく、嘔吐や下痢などの消化器症状が続いているときは胆嚢粘液嚢腫の可能性がありますね。
胆嚢粘液嚢腫は悪化すると胆嚢破裂を引き起こすことがあります。
胆嚢が破裂すると犬のお腹の中に炎症が広がり腹膜炎という病態になります。
このような場合は犬がとてもぐったりして元気がなくなる可能性が高いです。
命の危険があるため、犬に上記のような症状がみられたら一刻も早く動物病院を受診しましょう。
犬の胆嚢粘液嚢腫の治療
犬の胆嚢粘液嚢腫の治療方法には内科治療と外科治療があります。
それぞれについて解説します。
内科治療
犬の胆嚢粘液嚢腫の内科治療では、薬でドロドロの胆汁を薄めて胆嚢から排出させることが目的です。
犬の胆嚢粘液嚢腫の治療で使う薬は
- ウルソデオキシコール酸
- トレピブトン
などです。
ウルソデオキシコール酸は利胆剤という種類の薬で、胆汁を水分で薄める作用があります。
肝臓で作られる胆汁は90%が水分で、胆嚢に貯蔵されてから5〜10倍に濃縮されます。
ウルソデオキシコール酸は肝臓でたくさん胆汁を作らせて胆嚢内の胆汁をできるだけサラサラにする効果がありますね。
ウルソデオキシコール酸の使用には注意が必要な場合があります。
それは胆汁の通り道である総胆管が詰まっているときです。
総胆管が詰まっているときにウルソデオキシコール酸を使用すると胆汁が胆嚢に溜まりすぎてしまい、胆嚢破裂を起こしてしまう可能性があります。
もともと愛犬が胆嚢や肝臓の治療を受けていてウルソデオキシコール酸を持っている場合でも自己判断で使用せず、獣医師の指導の元で正しく使用するようにしましょう。
トレピブトンは総胆管を動かす筋肉を弛緩させる薬です。
胆嚢から十二指腸に胆汁が排出される時に通るのが総胆管で、トレピブトンがその筋肉を弛緩させることで胆汁の排出を促します。
外科治療
犬の胆嚢粘液嚢腫は内科治療で効果がみられない場合や、胆嚢破裂を起こしている場合などは外科手術が必要です。
外科手術では胆嚢摘出を行います。
胆嚢粘液嚢腫では手術のタイミングを逃すと手術の難易度や術後の回復に大きく影響を及ぼします。
実際の症例
ここからは当院で治療を行った実際の症例を紹介いたします。
症例は13歳のミニチュアシュナウザーの男の子です。
前日から嘔吐していて、食欲もないとのことで来院されました。
血液検査では
- 肝数値
- ビリルビン
- CRP
などが上昇していました。
この血液検査結果は肝臓や胆嚢に異常があることと、炎症が起きていることを示しています。
エコー検査でもキウイフルーツ状の胆嚢が観察され、腹水も溜まって腹膜炎を起こしているようでした。
以上の検査結果から胆嚢粘液嚢腫と胆嚢破裂が併発していると診断しました。
このような場合は緊急で手術が必要です。
今回の緊急手術では
- 胆嚢摘出
- 十二指腸切開
- 総胆管洗浄
を行いました。
これは胆嚢摘出前のお腹の中の写真です。

白い幕に包まれた丸い球状の臓器が胆嚢です。
胆嚢破裂を起こして胆嚢の内容物が漏れ出ています。
これは胆嚢を摘出した後、十二指腸を切開しているところです。

この切開部位から総胆管洗浄を行い、総胆管の中の詰まりを解消します。
これは摘出した胆嚢です。

胆嚢の中にある黒いゼリー状のものが粘液状になった胆汁です。
かなり大がかりな手術だったことに加え、この犬は基礎疾患に糖尿病があり血糖値のコントロールが必要でした。
そのため注意深い経過観察とさらなる治療が必要で、術後は3週間入院しました。
その後この犬は無事に退院し、現在は元気に過ごしています。
まとめ
いかがでしたか?
犬の胆嚢粘液嚢腫は治療が遅れると命の危険がある病気です。
- 犬の嘔吐が続いている
- 犬が食欲もなく、ぐったりとしている
このような時は迷わず動物病院を受診しましょう。
胆嚢の手術はリスクや難易度が高く、対応していない動物病院も多いです。
当院は外科治療に力を入れており、豊富な手術経験があります。
胆嚢粘液嚢腫の外科手術も可能です。
犬の胆嚢の病気にお悩みのことがありましたら、ぜひ当院までご相談ください。