2026/1/21
腫瘍科
ヨークシャーテリアのぶどう膜黒色腫の一例犬のぶどう膜黒色腫で眼球摘出術を行った症例を解説
「最近、片方の目が赤い気がする」
「目やには出るけど、元気そうだから様子を見ていた」
このような軽い目の症状では、ついつい様子を見てしまいますよね。
これらの多くは結膜炎や角膜炎といった炎症性疾患ですが、まれに目の奥に腫瘍が隠れていることがあります。
今回は犬のぶどう膜黒色腫を疑い、眼球摘出術を行った症例をもとに犬のぶどう膜黒色腫について解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、愛犬の目に違和感を感じたときに役立てていただければ幸いです。
犬のぶどう膜黒色腫について
ぶどう膜という名称には聞き馴染みがないかもしれませんね。
ぶどう膜とは目の中にある
- 虹彩:黒目の色の部分
- 毛様体:水晶体のピント調節や房水を作る部分
- 脈絡膜:眼底で血流を担う部分
をまとめた名称を指します。
ぶどう膜は血管が豊富で、目の機能を支えるとても重要な組織です。
ぶどう膜黒色腫は、メラニンを含む色素細胞が腫瘍化した病気です。
犬では主に虹彩や毛様体から発生することが多く、高齢犬での発生が目立ちます。
犬のぶどう膜黒色腫は、
- ゆっくり進行する
- 分化度が高く、おとなしい性質
- 周りの組織への浸潤性が強い
- 眼球内に限局することが多い
といった特徴があり、転移は少ないとされています。
しかし、ぶどう膜の外側にある強膜まで浸潤すると転移リスクが高まるため、早期の判断が重要です。
犬のぶどう膜黒色腫のサイン
犬のぶどう膜黒色腫では、初期には以下のようなよくある目の症状しか見られないことがあります。
- 目が赤い
- 目やにが増えた
- 片目だけがしょぼしょぼする
- 涙が多い
犬のぶどう膜黒色腫は進行すると、
- 眼球内出血
- 緑内障による眼圧上昇
- 強い目の痛み
- 視力低下
などを引き起こすこともあります。
とくに「片眼だけ」「治療してもなかなか改善しない」という場合は注意が必要です。
犬のぶどう膜黒色腫の診断
犬のぶどう膜黒色腫の診断には以下のような検査が組み合わされます。
- スリットランプ検査
- 眼底検査
- 眼部エコー検査
- 眼圧検査
犬の目に白内障や出血があると、目の奥を直接観察することが難しくなります。
そのような場合では、眼部エコー検査は眼内腫瘍を発見するための重要な検査です。
犬のぶどう膜黒色腫の治療
犬のぶどう膜黒色腫の治療は外科手術による腫瘍の摘出です。
腫瘍のサイズや周囲組織への浸潤度合いにより
- 眼球摘出術
- 部分切除術
- レーザー凝固術
が行われます。
それぞれについて解説していきます。
眼球摘出術
犬のぶどう膜黒色腫では
- 強膜に浸潤している
- 部分切除が適応ではない
- 視覚の回復が見込めない
場合には眼球摘出術が標準的な治療です。
犬のぶどう膜黒色腫では眼球摘出術を行うことで、
- 痛みの除去
- 腫瘍の完全切除
- 正確な病理診断
が可能です。
部分切除術
犬のぶどう膜黒色腫に対する部分切除術では、虹彩や虹彩と毛様体の切除により腫瘍が摘出されます。
部分切除術では犬の眼球の温存が可能です。
犬の目に症状が出ている場合は、すでに部分切除術が行われるには腫瘍が大きすぎるため適応とならないことが多いです。
レーザー凝固術
犬のぶどう膜黒色腫に対するレーザー凝固術では、レーザーにより腫瘍が切除されます。
レーザー凝固術も部分切除と同様に犬の眼球の温存が可能ですが、腫瘍のサイズによって適応が限られています。
実際の症例紹介
今回紹介する症例は13歳のヨークシャーテリアです。
1ヶ月前から左眼が赤い、目やにが出るようになったとのことで来院されました。
スリットランプ検査と眼部エコー検査を行ったところ、左眼の内眼角側の毛様体領域に腫瘤状病変が確認されました。
こちらが眼部エコー検査の画像です。

眼内の内側の白い部分が腫瘤です。
より詳しく診てもらうために眼科専門クリニックを受診していただきました。
その結果、
- ぶどう膜黒色腫が疑われる
- 診断と治療を兼ねた眼球摘出が推奨
という判断となりました。
全身スクリーニング検査では転移を疑う所見は認められませんでした。
飼い主様と相談の上、当院で左眼の眼球摘出術を実施することになりました。
こちらが手術時の目の様子です。

犬の目には白内障があり、腫瘤により水晶体が押されている様子も確認されました。
全身麻酔下で手術を行い、手術後は5日間の入院と経過観察を行いました。
摘出した眼球の病理検査では、
- 虹彩〜毛様体由来の黒色腫
- 分化度の高い良性腫瘍
- 強膜への浸潤なし
- 腫瘍の完全切除
という結果でした。
摘出されたぶどう膜黒色腫は分化度が高く、今後の転移リスクは極めて低いと判断されました。
まとめ
犬の目の腫瘍は、「目が赤い」「目やにが出る」といった軽い症状から始まります。
今回の症例のように、軽い目の症状でも受診していただけると早い段階で治療につなげることができます。
「目の症状だから様子見でいいかな」と思わず、少しでも気になる変化があれば、早めに動物病院へご相談ください。
当院では、眼科疾患や腫瘍疾患の診断・治療にも力を入れています。
愛犬の目の赤みや違和感が気になる場合は、気軽に当院へお越しください。