症例紹介

Case

2025/10/7

整形外科

爪用の滑り止めを使用して歩行が改善したトイプードルの一例「立ちたい」「歩きたい」をサポート

ケガや病気、加齢の影響で思うように立ち上がれない、歩けない。
愛犬のそんな姿を見るのはとても切ないものです。

立ち上がりや歩行を補助する方法として、足裏に貼るシールや靴下などの滑り止めがよく知られています。
一方で、姿勢を保つためには爪先の踏ん張りも重要で、爪に補助具を付けることでスムーズに動けるようになるケースもあります。

今回紹介するのは、爪用の滑り止めを使用して歩けるようになった17歳のトイプードルの症例です。

同じような悩みを持つ子のサポートを考えるうえで、参考になれば幸いです。

爪用の滑り止めについて

病気や年を取ったせいで足の踏ん張りが効かなくなると、フローリングやタイルなどの滑りやすい床を歩くとき、足が広がって姿勢を保つのが難しくなります。
爪用の滑り止めは、爪先で床をとらえる力(グリップ力)をサポートするので、犬が安定して立てるようになります。

リハビリや介護の補助具として取り入れている動物病院も多いです。

滑り止めの使い方

使い方はとても簡単で、犬の足の爪(親指以外の4本)にゴム製の小さなチューブをはめます。
4本の足すべてに着用すると、合計16個使うことになります。

装着後は、1〜3ヶ月付けっぱなしで使用できますが、ゴムが劣化したり、ひび割れたりしたら交換が必要です。
包帯や滑り止めシールなどの他の補助具と併用できる点も特徴です。

爪の形や長さによってサイズが異なるため、購入するときは動物病院で爪のサイズを測ってもらい、正しい使い方の指導を受けましょう。

他の補助具との違い

立ち上がりや歩行を補助する手段として、足の裏に貼る滑り止めシールや靴下も一般的です。

しかし、シールや靴下では爪先の踏ん張りをサポートできないため、うまく立ち上がれない子もいます。
また、違和感を感じて犬が自分で外してしまうことも。

一方、爪用の滑り止めは爪先に直接取り付けて踏ん張る力をサポートできるのが大きな特徴です。

靴下のように蒸れることがなく、肉球の感覚も変わらないので犬が違和感を感じにくいです。
自分では外しにくい点もメリットと言えるでしょう。

犬の自信回復とQOLの向上にも繋がる

立てない、歩けないという状態は犬にとって大きなストレスであり、生活範囲も制限されてしまいます。
この状況が続くと、犬の「動きたい」というという意欲が失われてしまうことにつながりかねません。

しかし、立てるようになると「できた」という成功体験が自信につながり、その後立ち上がりや歩行意欲が高まるケースもあります。

立つ姿勢が安定すると転倒や自傷のリスクを減らせるだけでなく、活動性が増してQOL(生活の質)の改善につながるのも大きなメリットです。

実際の症例:爪用の滑り止めの使用で歩行が改善したトイプードルの一例

当院で治療した、17歳のトイプードル、避妊手術済みの女の子の症例を紹介します。
「立てない。立とうともがいているうちに引っ掻いて足を傷をつけてしまう」との主訴で来院されました。

この子は、病気のせいで両目を摘出しており、目が全く見えていません。
また、以前から左前足の関節の向きが正常と異なっていて、正しい姿勢を取るのが難しい状態でした。

まず歩行検査やX線検査などを行い、病気がないかを確認しました。
その結果体の機能には異常はなく、立てない主な原因は、加齢による筋肉と爪先のグリップ力の低下と考えられました。

下の写真は、足の爪に滑り止めを装着したところの写真です。
写真では1本の爪にしか付けていませんが、実際は1本の足につき親指以外の4つの爪に装着します。

爪用の滑り止めを装着したところ

矢印の先端部分の出っ張りが地面と接することで安定性が高まり、爪先の踏ん張りをサポートする仕組みになっています。

この子の場合、滑り止めの装着に加え、パットの滑り止めと傷の保護のため包帯を巻く必要がありました。

以下の映像は、歩行の様子です。
目が見えないためスタスタと歩くことは難しいですが、自分の身体を足でしっかりと支えて歩けるようになりました。

まとめ

犬が立ち上がれない、歩けない理由はさまざまですが、その一因として爪先の踏ん張りが弱くなっていることも考えられます。
爪用の滑り止めは、爪先の踏ん張る力を補うことで安定した立ち姿勢を保ちやすくして、歩行をサポートする補助具です。

立てるようになったことで自信を取り戻し、活発さを取り戻す犬もいます。

「最近、床で滑ってうまく歩けないようだ」「立ち上がるのが大変そう」という様子が見られたときは、当院にご相談ください。
一緒にその子に合ったサポート方法を考えていきましょう。

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