症例紹介

Case

2025/8/24

泌尿器/生殖器科

シーズーの腹腔鏡を用いた犬の避妊手術の一例痛みの少ない犬の避妊手術を解説

「避妊手術って痛そうだけど、本当にやったほうがいいですか?」
このような相談を飼い主様からよく受けます。
まだ小さい犬に手術で痛い思いをさせてしまうことに、不安を抱く飼い主様も多いでしょう。
人と同じように、動物でも痛みの少ない医療(低侵襲医療)は発展してきています。
最近では、痛みの少ない新しい避妊手術の方法として、腹腔鏡を用いた避妊手術が注目されています。

本記事では実際の症例をもとに、腹腔鏡を用いた避妊手術を解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、痛みの少ない新しい避妊手術を知っていただけると幸いです。

犬の避妊手術のメリット

犬の避妊手術とは、卵巣と子宮を摘出する予防的手術です。
避妊手術を行うメリットには以下のものがあります。

  • 望まない妊娠を防ぐこと
  • 性ホルモンが関係する病気のリスクを下げることです。

それぞれについて解説していきます。

望まない妊娠を防ぐこと

犬は2匹以上の多頭飼育やドッグランに行くなど、他の犬と交流する機会は少なくありません。
その際に飼い主様の意図せず、犬同士が交尾してしまうこともあります。
犬が避妊手術を行なっていれば、交尾してしまっても妊娠に至ることはありません。
このように望まない妊娠を防ぐために、犬の避妊手術を行います。

性ホルモンが関係する病気

性ホルモンが関係する犬の病気には子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などがあります。
これらの病気は中〜高齢に発症することが多いです。
また、犬の乳腺腫瘍は発情回数が発症リスクに関わると言われています。
そのため、犬の避妊手術は生後6ヶ月〜1年までに行うことが推奨されています。
乳腺腫瘍や子宮蓄膿症はいずれも命に大きく関わる病気です。
将来的なリスクを減らすためにも、犬の避妊手術は予防に行われています。

犬の避妊手術のデメリット

ここまではお話してきたように犬の避妊手術には多くのメリットがあります。
しかし、犬の避妊手術にはメリットだけではなく、デメリットもあります。

犬の避妊手術デメリット・リスクは以下のものです。

  • 全身麻酔や手術に伴うリスク(全身状態の悪化、出血など)
  • 手術による痛み
  • 太りやすくなる
  • 尿失禁を起こす

一般的に犬の避妊手術のデメリットよりもメリットのほうが大きいです。
しかし稀に犬の命に関わるような状況に陥ることもあります。
犬の避妊手術を行う際は獣医師にしっかり相談しましょう。

犬の腹腔鏡下避妊手術とは?

犬の腹腔鏡下避妊手術とは、腹腔鏡を用いた低侵襲な犬の避妊手術です。
腹腔鏡とは、内視鏡という体内の様子を観察するカメラが先端についた医療機器です。
内視鏡といえば胃カメラとして人の健康診断に用いられているイメージですね。
胃カメラであれば、口から内視鏡を入れ胃の中を観察します。
腹腔鏡ではお腹に小さな傷口を作りカメラを挿入して手術を行います。

腹腔鏡下避妊手術のメリット

腹腔鏡を用いた避妊手術は、1cm程度の小さな傷口を2〜3箇所作ります。
この小さな傷口から腹腔鏡や手術に必要な器具を入れることで、お腹を開けずに手術をすることが可能です。
傷口が小さく、お腹を開けないことによって以下のメリットが挙げられます。

  • 痛みが少ない
  • 臓器が乾燥せずダメージが少ない
  • カメラで出血の有無を詳しく見れる

腹腔鏡下避妊手術のデメリット

ここまでは犬の避妊手術に腹腔鏡を用いることのメリットについて説明してきました。
腹腔鏡を用いることはメリットだけではなく、デメリットもあります。
犬の腹腔鏡下避妊手術のデメリット・リスクには以下のものがあります。

  • 通常の避妊手術より費用がかかる
  • 超小型犬などでは腹腔鏡を適応できない
  • 出血や子宮卵巣の癒着などの異常が見られた場合は開腹手術に切り替わることがある

可能であれば若い犬の避妊手術では、腹腔鏡下避妊手術が推奨されます。
しかし通常の犬の避妊手術より費用がかかるので、獣医師と相談の上、ご自身にあった選択をしましょう。

実際の症例:シーズーの腹腔鏡を用いた避妊手術

ここで実際に腹腔鏡を用いて避妊手術を行った症例をご紹介します。

6ヶ月齢の未避妊メスのシーズーです。

避妊手術の相談として当院を受診されました。
飼い主様は、病気の予防など避妊手術の必要性は理解されていましたが、手術の痛みに不安を抱えていました。
そこで飼い主様と相談し、痛みの少ない腹腔鏡を用いた避妊手術を行うことにしました。

犬の避妊手術は全身麻酔をかけて行われます。
犬に全身麻酔をかけて良いか、血液検査、レントゲン検査などの手術前検査で確認が必要となります。
今回ご紹介する症例も手術前検査に問題はなく、犬に全身麻酔をかけて避妊手術に臨むこととなりました。

犬に腹腔鏡を挿入する様子

手術は40分ほどで終了し、麻酔からの覚醒もスムーズでした。
手術後の経過も順調だったため、手術当日に退院しました。

腹腔鏡の手術の傷跡

この症例では、乳歯が残っていたため避妊手術と併せて乳歯抜歯が行われました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は腹腔鏡を用いた犬の避妊手術について詳しくご説明いたしました。

避妊手術は多くの犬が経験する手術になります。
少しでも犬の痛みを少なくしてあげることは重要です。
腹腔鏡手術は痛みの軽減と回復の早さから、犬の避妊手術において非常に有用な選択肢です。
犬の避妊手術で悩みがある場合は、ぜひ当院までご相談ください。

診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です

pagetop
loading