2025/7/7
皮膚/耳科
パグの顎ニキビの一例犬の顎のニキビについて
犬の顎の下にニキビができていたことはありませんか?
犬が痒がっていたり、皮膚が赤くなっていたりすると心配ですよね。
「犬の顎がぶつぶつしている。」
「頻繁に顎を掻いていてかわいそう。」
「顎を掻きすぎて真っ赤になっている。」
こんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬の顎のニキビは膿皮症という皮膚疾患かもしれません。
今回は当院に実際に来院された症例とともに犬の顎のニキビについて解説いたします。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の顎にニキビができたときの対処法を学んでいただければ幸いです。
犬の顎のニキビは膿皮症?
犬の顎にニキビができるのは腫瘍が原因のこともあります。
しかし痒みを伴って赤く炎症を起こしている場合は、深いところに起きている皮膚の感染症(膿皮症)の可能性が高いです。
ここからは膿皮症について詳しく解説します。
膿皮症とは
膿皮症とは皮膚に細菌が増殖することによっておこる疾患です。
感染の深さによって表在性膿皮症と深在性膿皮症などに分類されています。
それぞれについて解説します。
表在性膿皮症
犬の表在性膿皮症は様々な疾患が原因で発症します。
表在性膿皮症の原因となる疾患は
- 犬アトピー性皮膚炎
- 甲状腺機能低下症
- 脂漏症
などです。
これらの疾患によって皮膚のバリア機能が低下すると細菌が増殖しやすくなり、表在性膿皮症が発症します。
感染する細菌はマラセチアや黄色ブドウ球菌という皮膚の常在菌やその仲間であることがほとんどです。
深在性膿皮症
深在性膿皮症は感染が皮膚の深いところで起こったものです。
外傷や咬傷などによって深在性膿皮症が発症することもあります。
今回の顎ニキビは、皮膚の表面ではなく毛穴という少し深いところで感染が起きるためこちらに該当します。
こちらも原因菌は表在性膿皮症と同じブドウ球菌の仲間であることが多いですが、他の細菌が原因のこともあります。
治療は、抗生剤の内服の投与を表在性膿皮症より長く行う必要が出ることがほとんどです。
顎ニキビの好発犬種
顎ニキビには発症しやすい犬種があります。
- フレンチブルドッグ
- パグ
- ボクサー
- ボストンテリア
- ピンシャー
などが顎ニキビの好発犬種です。
この犬種で顎にたくさんのニキビができている時は動物病院を受診することをおすすめします。
犬の顎のニキビの治療
ここまでお伝えしたように犬の顎のニキビは深在性膿皮症が原因となります。
深在性膿皮症の治療には
- 抗生剤の内服や外用薬の塗布
- ステロイドなどの内服
が必要になります。
抗生物質の内服や外用薬の塗布
感染している菌に対して抗生物質を内服させたり、外用薬を塗布したりします。
深在性膿皮症は表在性膿皮症よりも治療に時間がかかることが多く、抗生物質の投与を1〜3ヶ月以上続けることもあります。
抗生物質は最後までしっかりと飲ませきることが大切です。
途中で抗生物質の投薬を辞めると、抗生物質の効かない耐性菌というものができて余計に厄介なことになってしまいます。
自己判断で投薬を中止せず、獣医師の指示に従うようにしましょう。
ステロイドなどの内服
激しい痒みや炎症を伴う場合には短期的にステロイドの投与を行うことがあります。
ステロイドは炎症と痒みを抑える働きがある薬です。
炎症を抑えるとともに、痒みを抑え犬が皮膚を掻かなくなることで皮膚の状態が改善するという効果も期待できます。
実際の症例
ここからは当院で治療を行った実際の症例を紹介していきます。
症例は3歳のパグの女の子です。
「顎にぶつぶつができて痒そうにしている。」
ということで来院されました。
これは初診時の写真です。
顎にいくつもニキビがあり、とても痒そうですよね。
検査の結果、ブドウ球菌による深在性膿皮症と診断されました。
6週間の抗菌薬と併せて3週間のステロイド投与を行いました。
治療開始2週間後の写真です。
治療開始4週間後の写真です。
今のところ再発もなく、毛も生えてニキビの痕もわからなくなっています。
まとめ
いかがでしたか?
犬の顎のニキビは深いところに起きる膿皮症であることが多いです。
しかし中には、寄生虫や腫瘍が原因であることもあります。
腫瘍と膿皮症の違いは飼い主様からみるとわかりづらいことがあるため、犬の顎にニキビができていたら動物病院に連れていきましょう。
また、深在性膿皮症は治療に時間がかかることが多いです。
症状が良くなってきたからといって自己判断で薬の投与をやめると耐性菌ができて余計に大変なことになってしまいます。
膿皮症の治療は獣医師の指示に従い、適切に行いましょう。
当院は皮膚科の症例数が多く、経験豊富な獣医師が診察を行ったりアドバイザーとして診察に関わります。
セカンドオピニオンも受け付けております。
犬の皮膚トラブルにお困りの際はぜひ獣医師・柳田までご相談ください。