症例紹介

Case

2025/6/17

消化器科

ミニチュアダックスフンドの炎症性ポリープの一例当院で直腸のポリープを外科切除した症例

「愛犬の下痢がなかなか治らない」
「排便の度に出血してかわいそう」
「おしりをしきりに舐めているけど大丈夫かな」
などと思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
上記のような場合、愛犬の腸に炎症性ポリープが隠れているかもしれません。

今回はこの炎症性ポリープについて、当院で実際に外科切除を行なった症例を交えながら解説します。
愛犬の長引く下痢にお困りの方はぜひ最後までお読みいただき、ご参考にしていただければ幸いです。

炎症性ポリープとは

炎症性ポリープは、慢性的な炎症によって粘膜にできる良性の腫瘍のことです。
人間にも同じ名前の病気があるため、お聞きになったことがあるかもしれませんね。
犬の場合、ポリープのできる場所は大腸(直腸、結腸)が多いため、下痢や血便といった便の不調を引き起こします。

なぜポリープの原因となる炎症が起こるのかについてはよくわかっていません。
しかし炎症性ポリープには

  • ポリープの中に免疫系の細胞が集まる
  • 免疫療法に反応する
  • ミニチュアダックスフンドに多く発生する

といった特徴があることから、免疫異常と遺伝的な問題が関わっている可能性があります。

炎症性ポリープの症状

炎症性ポリープの代表的な症状は以下のようなものがあります。

  • 下痢
  • 血便
  • しぶり(排便の姿勢をとっているのになかなか便が出ない状態)

上記のような症状は長期にわたり継続していることが多いです。
炎症性ポリープは自然に治ることがほとんどないからです。

犬が下痢をするのは比較的よくあることですよね。
しかし炎症性ポリープの場合、治療せず放置すると悪性の癌へ変わる危険性があります。
下痢や血便の症状が続いている場合には、早めに動物病院にかかりましょう。

炎症性ポリープの検査

炎症性ポリープの検査には、

  • 糞便検査
  • 直腸内診
  • エコー検査
  • レントゲン検査
  • 血液検査

があります。
炎症性ポリープの症状は他の病気でもよく見られるため、複数の検査で他の病気との鑑別を行います。
検査の結果腸内の腫瘍が疑われた場合、腫瘍が良性(ポリープ)か悪性(癌)かの診断が必要です。
内視鏡を使って腫瘍の一部を切除し、病理検査によって診断します。

炎症性ポリープの治療

炎症性ポリープの治療は薬物療法が基本であり、以下のような薬を使用します。

  • ステロイド剤
  • 免疫抑制剤
  • 抗生剤

上記の薬で効果があれば、薬の使用を継続し症状をコントロールしていきます。
炎症性ポリープは完治が難しく再発も多いため、生涯にわたる投薬が必要です。

薬への反応が悪い場合やポリープが大きい場合には手術を実施します。
手術は直腸粘膜プルスルー術という方法が一般的です。
肛門から直腸を引き抜きポリープを腸粘膜ごと切除します。
炎症性ポリープは手術しても再発の可能性があるため、薬物療法も併せて行うことが重要です。

実際の症例

ここからは実際の症例をご紹介します。

症例は14歳去勢手術済みのミニチュアダックスフンドの男の子です。
血便が1ヶ月以上続き、他院で処方された薬も効果が見られないという主訴で来院されました。
当院にて内視鏡検査を実施したところ、肛門から10cmのところに腫瘍がみつかりました。
これは実際の症例の肛門の中の写真です。
丸い腫瘍が目視できます。

肛門から見た中の様子

内視鏡下で切除した腫瘍の一部は、病理検査によって炎症性ポリープと診断されました。
診断後は速やかに全身麻酔下での直腸粘膜プルスルー術を行いました。

手術中の症例の様子

これは肛門から直腸を引き抜いている様子です。

肛門から直腸を引き抜いている様子

引き抜いた直腸を切開すると、炎症性ポリープが確認できました。

引き抜いた直腸の中の様子

直腸粘膜プルスルー術のあとに直腸を縫合している様子です。

手術後の縫合している様子

炎症性ポリープとその周辺の粘膜を無事切除することができました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
炎症性ポリープは治療せずに放置してしまうと癌になる危険性のある病気です。
愛犬の下痢や血便がなかなか治らない場合には、できるだけ早く動物病院にかかりましょう。

当院では炎症性ポリープに対して薬物療法のほか外科手術も積極的に行なっております。
愛犬の便の調子が悪い場合や炎症性ポリープの薬が効かない場合には、お気軽に当院までご相談ください。

診察案内はこちら
当院のLINE公式アカウントから簡単に予約が可能です

pagetop
loading