症例紹介

Case

2025/6/11

整形外科

トイプードルの橈尺骨骨折の一例小型犬は橈尺骨骨折に要注意

「ソファから飛び降りた時に犬がキャンと鳴いた」
「犬が前足をあげて、痛そうにしている」
犬にこのような症状が見られたら、橈尺骨骨折の可能性があります。

橈尺骨骨折は小型犬や子犬によく見られる骨折の一つです。
この記事では犬の橈尺骨骨折について飼い主様が知っておくべきポイントを詳しく解説します。
犬の橈尺骨骨折に直面した時に落ち着いて適切な対応ができるよう、ぜひ最後までお読みください。

犬の橈尺骨骨折とは?

橈尺骨骨折は犬の肘から手首の間に位置する橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の骨折を指します。
橈骨と尺骨は前足の主要な骨であり、体重を支え、歩行に重要な役割を果たしています。
しかし、小型犬は骨が細いため、橈尺骨骨折の発生が非常に多いです。
小型犬の中でも、

  • トイプードル
  • チワワ
  • ポメラニアン
  • ヨークシャーテリア

などは橈尺骨骨折が多いですね。

橈尺骨骨折は犬が高いところから飛び降りたときや、不意に足を捻ったときなどに発生することが一般的です。
また、自動車事故や飼い主様がうっかり犬を踏んでしまうなどで骨折してしまうケースもあります。

犬の橈尺骨骨折はこんな症状に要注意!

犬の橈尺骨骨折では痛みを伴い、以下のような症状が見られます。

  • 足を地面につけない
  • 足が腫れていて、熱感がある
  • 足を触ると痛がる
  • 足が変形している

犬の前足にこれらのサインがある時は橈尺骨骨折の可能性が高いです。
橈尺骨骨折を疑った場合は骨折部位を動かさないように、犬をケージやクレートに入れ、安静を保ちましょう。
また、早急に動物病院を受診することも大切です

犬の橈尺骨骨折の治療と回復までのステップ

犬の橈尺骨骨折治療は大きく分けて、保存療法と外科手術の2つです。
保存療法は比較的軽度の骨折や骨がくっつきやすい子犬の場合に選択されることがあります。
保存療法ではギプスなどで骨折部位を固定し、骨が自然に癒合するのを待ちます。
費用は手術に比べて抑えられますが、骨が癒合するまでには数ヶ月かかることもあり、飼い主様はこまめなケアと注意深い観察が必要です。
また、包帯で長期間固定していると皮膚炎を起こすこともあるので、注意しましょう。

一方、外科手術ではプレートやピンなどのインプラントを用いて骨折片を固定します。
手術によって早期の機能回復と安定した骨癒合が期待できるため、犬の橈尺骨骨折では外科手術が選択されることがほとんどです。
外科手術後は定期的にレントゲン検査などで骨癒合の状態を確認しながら、状況に応じてインプラントを抜去することもあります。

犬の橈尺骨骨折の治療がうまくいかないとどうなる?

犬の橈尺骨骨折は適切な治療が行われれば多くの場合で良好な経過をたどりますが、さまざまな要因で治療がうまくいかないケースも存在します。
ここでは治療がうまくいかなかった場合にどのようなことが起こりうるのかを解説します。

骨癒合不全

橈尺骨骨折の治療において、もっとも懸念される合併症の一つが骨癒合不全です。
骨癒合不全は骨が正常に癒合しない状態を指します。

骨癒合不全は骨折部位の固定が不十分で骨が安定しなかったり、骨の形成に必要な血流が不足している場合に起こりやすいです。
また、骨折部位の細菌感染も骨癒合不全の原因になります。
骨癒合不全が起きた場合は再手術が必要になるケースや、慢性的な疼痛が残るケースがあるので注意が必要です。

変形癒合

変形癒合は骨が本来の位置からずれたまま癒合してしまう状態です。
変形癒合は骨折の整復が不十分だった場合や、ギプス固定中に骨がずれてしまった場合に起こります。
変形癒合が生じると、前足の変形や関節の可動域制限などが生じ、日常生活に支障を来す可能性があります。

骨折部位の再骨折

骨が完全に癒合する前に過度な負荷がかかると、再骨折のリスクが高まります。
特に、活発な犬や子犬は再骨折の注意が必要です。

再骨折を防ぐためには、レントゲン検査などで骨癒合の状態を定期的に確認し、経過観察を行うことが重要です。
橈尺骨骨折の経過観察中に患部の腫れや痛みなどが見られたら、すぐに獣医師に連絡しましょう。

実際の症例

今回紹介する症例は1歳のメスのトイプードルです。
橈尺骨骨折で他院からの紹介で当院に来院されました。
当院でも身体検査とレントゲン検査を行い、橈尺骨骨折と確認し、外科手術を実施しました。
こちらが手術中の写真です。

骨折に対してプレートを入れている様子

今回はチタン製のプレートを用いて、骨折部位を固定しました。

こちらが手術直後のレントゲン写真です。

手術直後の骨折の様子
骨折部位の骨がぴったりと合わさっているのが分かります。
術後も注意深くモニタリングを行い、術後1ヶ月と術後3ヶ月の時点で順調に骨癒合が進んでいました。

1ヶ月後の骨折の様子

3ヶ月後の骨折の様子

今回の症例は術後の経過も良好なため、今後プレートとネジの抜去術を検討中です。

まとめ

犬の橈尺骨骨折は早期発見と適切な治療により、良好な予後が期待できます。
しかし、橈尺骨骨折の治療は合併症も多く、トラブルが発生すると犬の生活の質が低下するので注意しましょう。
当院では橈尺骨骨折をはじめとする整形外科の診療に力を入れ、飼い主様の不安を少しでも軽減できるように取り組んでいます。
犬の橈尺骨骨折の治療にお悩みの方は気軽にご相談ください。

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