症例紹介

Case

2025/5/28

消化器科

MIX猫の紐状異物誤食の一例当院で開腹手術を実施した症例

猫を飼われている方の中には、紐のついたおもちゃを愛猫に与えている方も多いのではないでしょうか?
紐付きのおもちゃは喜んで遊んでくれる猫が多く、人気のおもちゃですよね。
しかし実は紐付きのおもちゃは重大な事故を引き起こすことがあります。

今回はこの紐状おもちゃの危険性を、紐状の異物を食べてしまったことで手術に至った実際の症例を交えながら解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫と遊ぶ時に潜む危険性について知っていただけたら幸いです。

猫の紐状異物誤食とは

誤食とは、本来食べたり飲んだりしてはいけないものを猫が誤って飲み込んでしまった状態です。
小さな異物であれば腸の蠕動運動で排泄される可能性があります。
しかし紐状異物の場合には腸の蠕動運動で送り出すことが難しく、自然な排泄は難しいです。

腸内に紐状異物が留まることで起きるのが腸閉塞です。
腸閉塞が起きると紐に引きつられ腸がじゃばら状に折りたたまれます。
じゃばらになった部分では血行障害が起こり、時間の経過とともに腸は穿孔や壊死を起こします。
猫が紐を誤食したことで腸の穿孔や壊死が起きるなんてとても怖いですよね。
ご自宅の猫が届く場所に紐状のものはないか、今一度確認してみましょう。

猫の紐状異物誤食の原因

紐状異物誤食の代表的な原因は以下のようなものです。

  • 紐付きの猫用おもちゃ
  • 細長い猫じゃらし
  • ヘアゴム
  • ビニール紐
  • マスクの紐
  • 手芸用糸やタコ糸
  • ほつれた服の繊維

紐が細く長いほど誤食した際に重症になりやすいです。
しかし紐であっても細かく噛みちぎられていれば大きな問題にならないことが多いでしょう。
猫は犬に比べ誤食が少ないと言われていますが、紐状異物の場合には紐で遊んでいるうちに飲み込んでしまうケースが多いようです。

猫の紐状異物誤食の症状

紐状異物誤食の代表的な症状は以下のようなものです。

  • くり返し吐く
  • よだれがだらだらと出る
  • 口をくちゃくちゃと動かす
  • 食欲が低下する
  • 元気がなくなる
  • 便が出なくなる
  • 下痢や血便が出る

長い紐状異物の場合には、口や肛門から異物の端が見えることがあります。
口や肛門から異物の端が見えていたら、つい引っ張ってしまいたくなりますよね。
しかし紐状異物の端を無理に引っ張ると、さらに内臓を傷つけることになります。
紐状異物の端が見えていても無理に引っ張らないようにしましょう。

猫が紐状異物を食べたか確信が持てない場合でも、上記の症状が見られたらすぐに動物病院へご相談ください。

猫の紐状異物誤食の診断

猫に紐状異物誤食の疑いがある場合には、以下の検査を行います。

  • レントゲン検査
  • エコー検査
  • 内視鏡検査

猫の体内に紐状異物の存在が確認された場合ただちに治療を開始します。

猫の紐状異物誤食の治療

猫の紐状異物誤食の治療には、内視鏡による異物除去と開腹手術による異物除去があります。
紐状異物を食べてすぐの場合や異物が短いことがわかっている場合には、薬で嘔吐を促す治療も選択されることがあります。

当院で治療した症例紹介

今回ご紹介する症例は、7歳のMIX猫の去勢手術済みの男の子です。

嘔吐しているとの主訴で当院に来院されました。
内視鏡検査を実施しようとしたところ、口腔内に細い糸が確認されました。

猫の口から細い糸が見えている様子

糸は胃の幽門(胃の出口)を超えた状態でした。
内視鏡下での牽引は容易でなかったため、開腹手術を行いました。
小腸から大腸にかけて5箇所を切開し、糸を摘出しました。

画像は腸内の糸を摘出している様子です。

猫の腸内の糸を摘出している様子

腸内の糸を摘出中

糸を摘出し、切開した腸を縫合した様子です。

腸から糸を摘出し、縫合した後の様子

これが摘出した糸です。

摘出した糸

術後は食欲不振が続いていましたが、2週間後の再診時には食欲が上向きになりました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

猫の飼い主様は、紐状異物の誤食が非常に危険であることを頭の隅に置いておきましょう。
紐状のものが猫の届く場所にないか改めてご確認ください。
紐状のものを使い終わったらすぐに片付ける習慣を徹底していただくのも良いですね。

当院ではレントゲンやエコーの他に内視鏡も取り扱っております。
紐状異物の誤食における適切な診断と治療が可能です。
猫が紐状異物を食べたかもと思った時には、早めに当院までご相談ください。

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