2025/4/30
整形外科
イタリアングレイハウンドの橈尺骨骨折の一例犬の橈尺骨骨折の治療の重要性を解説
犬が高いところから飛び降りたり、転倒したりした後、足を引きずっていたら橈尺骨骨折を起こしているかもしれません。
橈尺骨骨折は特に小型犬や子犬に多く見られる骨折の一つで、適切な治療をしないと歩行障害や慢性痛の原因になることがあります。
この記事では犬の橈尺骨骨折の治療法などを実際の症例を交えて詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の橈尺骨骨折の理解を深めましょう。
犬の橈尺骨骨折とは?
橈骨と尺骨は犬の前足にある2本の骨で、手首と肘の間をつないでいます。
橈骨と尺骨は同時に骨折を起こすことが多く、その骨折を橈尺骨骨折と言います。
特に小型犬や子犬は骨が細いため、わずかな衝撃で橈尺骨骨折を起こしやすいです。
橈尺骨骨折は
- トイプードル
- ポメラニアン
- イタリアングレイハウンド
などの犬種に好発します。
犬が橈尺骨骨折をしやすい場面
橈尺骨骨折は日常生活の中でも起こり得ます。
特に以下のような場面で発生しやすいため、飼い主様は注意しましょう。
- ソファやベッドからの飛び降り
- 階段や段差での転倒
- 交通事故
- 他の犬とのケンカ
- 子犬の激しい遊び
特に子犬は活発で好奇心旺盛なため、高いところに登ったり、走り回ったりする際に骨折しやすいので注意が必要です。
犬の橈尺骨骨折の症状
犬が橈尺骨骨折を起こした場合は以下のような症状が見られます。
- 足を地面につけず、浮かせている
- 足を触ると痛がる
- 足が腫れて、熱感がある
- 足が変な方向に曲がっている
特に犬が足をまったく使えない場合は骨折を起こしている可能性が高いです。
犬に骨折を疑うような症状が見られたら、すみやかに動物病院を受診しましょう。
犬の橈尺骨骨折は外科手術が必要?
橈尺骨骨折の治療では外科手術が必要になることが多いです。
骨折による骨のずれが少ない場合はギプスや包帯などによる外固定を行うこともありますが、骨がくっつくまで時間がかかったり、骨が変形してしまうリスクがあります。
そのため、犬の橈尺骨骨折は手術による治療がおすすめです。
橈尺骨骨折の手術では骨折した骨をプレートなどで固定します。
骨をプレートで固定することで、骨にかかる負荷を軽減し、骨折部位の治癒を手助けします。
橈尺骨骨折の手術後は骨がくっつくまで1〜2ヶ月かかることが多いです。
手術直後に骨に負荷がかかると再骨折を起こすこともあるので注意しましょう。
橈尺骨骨折を防ぐための注意点
橈尺骨骨折を完全に防ぐことは難しいですが、以下の点に注意することで骨折のリスクを軽減することができます。
室内環境の整備する
家の中の危険な場所を特定し、落下や転倒の危険性を減らしましょう。
滑りやすい床には滑り止めのカーペットを敷いたり、階段にはゲートを設置し、犬が近づけないようにすることが有効です。
家の中で犬と遊ぶ際も安全な場所で行うことが大切です。
散歩時はリードを使用する
散歩中は交通事故や他の犬とのケンカにより、骨折をするリスクがあります。
散歩中は必ず、リードをつけ、他の犬とのトラブルや交通事故を予防しましょう。
伸縮性のあるリードは急な動きに対応しにくいため、伸びないリードの使用が推奨されます。
バランスのよい食事を心がける
健康な骨の成長にはバランスの取れた食事も大切です。
食事の栄養バランスが偏っていると、骨の強度が弱くなり、骨折しやすくなることもあります。
また、肥満も骨や関節の負荷を増大させるため、適切な食事管理を行いましょう。
実際の症例
今回ご紹介する症例は4ヶ月齢の未去勢雄のイタリアングレイハウンドです。
足を痛がり、骨折を疑う症状があるということで来院されました。
当院でレントゲン検査を行ったところ、橈尺骨骨折を確認しました。
こちらがレントゲン写真です。
この症例ではオーナー様と相談し、外科手術を行い、骨折部位をプレートを用いて整復を行いました。
こちらが手術後のレントゲン写真です。
術後の経過もよく、術後37日の段階で安静期間を終了とし、散歩を開始できるまでになりました。
レントゲン検査でも、骨折部位の骨がしっかりとくっついてきているのがわかります。
まとめ
犬の橈尺骨骨折は適切な治療を行えば多くの場合治癒しますが、放置すると後遺症が残る可能性があります。
犬が足を痛がっている場合は、すぐに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
また、日頃から予防策を心がけ、犬の健康を守りましょう。
当院では整形外科の治療に力を入れています。
犬の骨折治療でお悩みの方は気軽にご相談ください。